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生徒と家庭教師(オーフェン・マジオー) [ 141/196 ]
※生徒×家庭教師なマジオー(現代風)
「先生」
そう呼びかけると彼は気だるげにこちらを見た。
覇気がないのは食事をろくにとっていなかったせいだった筈だ。
「……何だよ」
「何だよ、じゃないですよ。教えてください」
ここ、と教科書のとある場所を指差す。彼は、ああとか、ううとかそんな呻き声を上げながら其処へ目を向ける。
駄目だ、目が死んでいる。
「…ちょっと何か持ってきます」
「本当か!」
その一言で彼の目が爛々と輝き出す。
こうなった時の彼はたとえ傷んだものであろうと喜んで口にする…のではないかと時折疑ってしまう。さすがに試したことはないが。
そのまま階段を降りて、冷蔵庫を開ける。めぼしい物はない。
戸棚を開ける。パンがあった。
それにハムとレタスを挟んで、それから牛乳をコップに注ぐ。あとは…と探すと冷蔵庫の角にヨーグルトがあった。
賞味期限は昨日だけど、まあ一日くらい問題ない。
それら全てをトレーに乗せて運ぶ。
「持ってきましたよ」
ドアを開けると彼は嬉しそうにトレーを受け取った。
いきなりパンを食べそうになるのを諌めて、まずは牛乳を飲んで貰う。胃が吃驚してしまうような気がしたからだ。
彼は不満そうだったが牛乳を飲み干してすぐにパンを食べ始めた。余程お腹が空いていたらしい。いい食べっぷりだった。
「――はぁ、美味かった」
「それは良かった。で、ここなんですけど…」
ようやく教えて貰う。でも彼の教え方はわかりやすいので好きだ。
食料を恵む――というと絶対怒るだろうが――くらいどうってことはない。
「ああ、ここはこの公式に当てはめてXを求めてから…」
先ほどより顔色がよくなった彼は機嫌よくシャーペンを滑らせる。黒い髪が揺れて、綺麗だと思う。
「あ、そうだオーフェンさん」
「先生と呼べ、先生と」
「先生、今日僕が夕食作る日なんで食べていきませんか?」
「食べる」
真剣な顔で頷く彼が可笑しくて、笑ったら小突かれた。
―END―
続く…?
生徒×家庭教師なマジオー
マジクはたぶんまだ無自覚
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