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モンダイジ(ルーライ)* [ 61/196 ]

問題児、という言葉が浮かんだ。
その生徒は頭が良かった。テストも小テストも抜き打ちテストも、全て満点に近い。授業中に当てても素知らぬ顔で答えを述べた。

優等生、なんて言葉も浮かぶ。特に授業の妨害もしない。提出物も一応出す。
ルークの授業以外も全て似たようなもので、成績はほぼオール5。

だけど、問題児なのだ。
何故なら?

彼は、授業中はおろかテストの時間でさえ眠っているのだから。




──モンダイジ──




テスト最終日。
帰りのホームルームを終えるのに一苦労した。『できた?』『できない』そんな会話が繰り広げられる。
ルークは二、三件用件を述べると教室を後にした。





それから6時間ほど過ぎた。
さあ帰ろうと思った矢先、教室に忘れ物をしたことに気づく。どうせ鍵をかけるような生徒もいなく、いつも開け放たれた教室だ。取りに帰ろう。そう思って自分の担当するクラスへ向かう。

引き戸を開けると静かな校舎内に木霊する音。薄暗い教室に明かりもつけずに入る。

教卓の上にある忘れ物を取ると、何かの気配がすることに気づく。
泥棒かと身構え、辺りを見回す。と、一番後ろの席で机に頭をつっぷしている黒髪が見えた。

その寝癖には見覚えがある。


ルークはわざと足音を立てるようにして彼に近づいていく。静まり返った教室に、よく響く、足音。
しかし彼は動かない。

わざと大きく回り込んで、背後に立つ。


「ライナ・リュートくん」


呼んでみる。が、起きない。
ルークは口元に微笑を浮かべてライナの耳元で囁く。


「リュートくん。起きないと、エリスさんが首浮遊の実験をしたいそうだから……」


実験体にされますよ、まで言う前に飛び起きる。



…ホント、エリスさんには弱いなぁ、なんて微笑む。


「ああ、間違えました。あれは二日前で、クロムくんが尊い犠牲になったんでしたね」



ライナは寝ぼけた眼でルークをじっと見ている。

黒い瞳が無意識のうちに潤んでいて、綺麗だと思った。


「…なんだ…先生か」



覇気のない口調で呟いて、辺りを見回している。すっかり日が沈んでしまっているのを見て『あーあ』と呟く。

こっちの存在はまるきり無視だ。




「仮にも『恋人』に対してそれはあんまりだと思いますけど?」


そう。

問題児で
優等生で

それから、恋人。




「先生、『恋人』だったら、他人行儀に名字でなんて呼びません」



拗ねたように呟くと、ライナはタンと軽やかに立ち上がった。
珍しく敬語で。


「何処へ行くんですか?」

「帰るんだよ」



机の横にかけてあった鞄を手にすると、足早に教室を去ろうとする。ルークはそれを呼び止めるように名前を呼んだ。



「ライナ」



ライナは立ち止まる。



「何だよ」

「一緒に帰りましょうか」

「ヤダ」

「…車で帰れば眠れるのに」

「……う…」



「どうせ帰る家は同じなんだし、別にいいと思いますが?」



「そーいう誤解を招く言い方はやめろよ」




更には、マンションの隣人関係にもあるのだから世の中狭い。



二つのドアを見比べて、どちらの部屋に行くかということになった。特に大差はない。ライナの両親は今日も帰ってこないし、ルークは一人暮らしだ。
なんとなく、ルークの部屋にした。


「…眠い」


ふらふらとした足取りで、しかし真っ直ぐソファーに向かうのだから最早才能と言えるかもしれない。



「ライナ」



呼び止めて、優しく抱きしめる。



「うわぁ…またこの展開?だから俺嫌なんだよね。痛いし疲れるし」

「いつもよさそうにしてるのに?」

「二重人格者は信用できないね」

「口調変えてるだけだろ?別に人格は変わってないし」

「…ぅ…まあ」



ルークはライナをソファーに押し倒すと、首筋に口づける。


「…くすぐったい」

「そうか?」


クスリと笑うとライナと唇を合わせる。柔らかい、ふにゃりとした感触が互いの唇に訪れた。

僅かに開いた唇から舌を差し入れ、ライナの歯をねっとりと舐める。ライナは身を震わせるとルークを睨む。


「…いいかげんに…」


吊り上がった眼は猫のそれのようで、ルークは笑った。


「『いいかげんに』?」


裏のある笑みを見せられてライナがビクリと体を震わせた。



「なあ、ライナ。俺はお前に選択肢を与えてきたつもりだけど?」

「またキレるし…だいたい選択肢ったって罠にハメられたようなもんだし…」



ブツクサと呟くライナの首を強く吸う。赤い花が咲いた首元を優しく撫で、ライナの頬に手を当てる。



「欲しいものは是が非でも手に入れるものだろう?」

「………」


この時のライナの気持ちを代弁するとこうなる。『うわーコイツかっこつけてるよ。でも全然かっこよくないし寧ろ嫌気が増すし』…云々。とにかく目一杯呆れていた。




…でも、





一人だったライナに手を差し伸べてくれたのも事実な訳で、



……刷り込みって恐ろしい



「…そうだな」


口元を緩ませて、ルークの首に腕を回した。珍しく素直なライナにルークは首を捻る。



「…何だ、珍しい」

「…偶には、な」

「そうか?」



ルークはまあいいかと思い優しく唇を重ねた。


「ん…」


柔らかい唇の隙間から舌を入り込ませると、ライナの鼻から息が漏れる。それに気を良くしてやんわりと舌を噛む。

痛いと顔を歪められ、ルークは微笑した。


シャツのボタンを外して肩をむき出しにする。ライナは身震いしたがすぐその震えを寒さでないものに変えてやる気だった。

胸の飾りをやんわりと噛んで、周囲の皮膚を薄く桃色に染める。その間に手はライナの下肢へと伸びていた。



「…ちょっ…!」

「あーあ…もう濡れてる」



ねっとりとし始めたライナのモノを緩く扱く。手がぬるつき、グチュグチュと淫猥な音が立つのでライナの顔が赤くなる。


「…ら」

「ん?」

「やるならさっさとしろっ!!」



羞恥により真っ赤に染まった顔。
熱に潤んだ涙に濡れた眼が、キッと細められた。


…絶対的な誘い文句



「…ライナ、俺以外の前でそんな顔するなよ?」



やれやれと子育てに疲れた父親のような顔で、ルークはライナの髪を撫でた。
そしてもう片方の手をライナのモノから更に奥まった秘所へと伸ばしていく。


※※※


室内には、ひどく淫猥な音が響いていた。


意識が飛びそうになる度に、ライナはルークの背にしがみついた。

体内いっぱいにその存在を主張しているルークのモノが、熱くライナを焦がしていくように思えた。


――溶けるかも





「なあ、俺以外とこんなことするなよ?」


腰を性急に突き動かして、行動とは反対に困ったような声と表情でライナを見るルーク

それを見て、ライナはこんな状況だというのに笑った。


言われなくたって、するか、馬鹿





始まりは、何だっただろう。

少なくとも告白の言葉ではなかった。


当たり前のように隣にいて、なんとなく一緒にいて

でもちゃんと好きなんだって、じゃなきゃ恋人にならないし。


だから、もうちょっと大人になってね、先生?




――そんなモンダイジの思い



―end―


適当さあふれてて申し訳ないです;
兎太様、リクエストありがとうございました!

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