ダメダメ戦隊 | ナノ
第16話 悪役の復讐
金子士郎はいつも榊玄也と共にいた。それがいつからなのかは、本人たちも覚えていない。
ただ幼なじみである彼らは気が付けばいつも一緒にいた。いつからかそばにいることが当たり前になっていた。
これはそんな金子士郎の日常である――
悪役の復讐
ホームルームが終わると同時に立ち上がり、すぐに教室を出る。目的地である隣のクラスまでは1分もかからない。そちらはまだホームルームが終わっていないようなので廊下で待つことにした。
こうして士郎が玄也を迎えにいくことがほとんどである。が、玄也のクラスが先に終わり、玄也がのんびりしてなお士郎のクラスの方が遅ければ玄也が迎えにくることもある。ごくたまにとしか言えないが、たしか半年くらい前にあったはずだ。
一緒に帰らない、という選択肢は一度としてなかった。
しばらく待っているとホームルームが終わったらしい。相原橙悟が出てきた。橙悟は士郎の姿を確認して口を開く。
「忠犬」
短く、それだけ言って去っていく。
おそらく屋上に向かったのだろう。と、橙悟の言葉を綺麗に無視して考える。この後玄也を連れていくのもその屋上である。
今日はたしか「Eコレンジャーをどうやって倒すか」が彼らの議題だ。
士郎はまだ生徒の残る他クラスにためらいなく入り、玄也の席に向かう。
「あ、金子だ。コイツまた寝ちまって起きねーんだよ」
玄也の友人(名前は忘れた)が困ったように笑う。
わりといつものことなので、机に涎を垂らしながら眠る玄也に軽くチョップする。
「――いでっ」
「おー、毎度のことながら、一発だな。俺らがどんだけ殴っても起きねーのに」
「ん……しろーだー」
まだ眠そうな目で、玄也が士郎を見上げる。
「でむかえごくろーである」
「屋上行くぞ」
「にゅ、なんれ……あっ、そっか」
目的を思い出したらしい玄也は飛び起きると、すぐに鞄を掴んで廊下へ走り出す。
「何してんだよ、早く行くぞ士郎!」
士郎はため息を吐くと、玄也の後を追って屋上に向かった。
廊下を走り出しそうになる玄也の襟首を掴んで歩かせたのは言うまでもない。
「あ、やっと来たわねバカップル」
屋上に着くと同時に山口灰那が口を開く。
――スパーン
「バカップルちがう!」
すかさず浜谷紫杏がハリセンを振り下ろしたらしい。
「なんで?四六時中一緒なのよ?朝も夜も学校も塾も放課後もよ?これで付き合ってないはずがないじゃない。むしろもう結婚よ新婚よ。毎晩よろしくやってるに決まってるじゃないの」
「決まってなぁあああああい!!」
いつものように紫杏が灰那の不穏な言動にツッコミを入れていく。その間橙悟は口出ししない。士郎は玄也の耳を塞ぐのに忙しいのでやはり口出ししなかった。
紫杏が息切れし始めた頃、ようやく士郎は口を挟む。
「Eコレンジャーをどうやって倒すか、考えるんだろ」
同時に玄也の耳から手を離すと玄也は「そうだ!あいつらを倒す作戦会議だ!」とか叫び出した。
「女の子もいるし、前回みたいに分散してやった方がいいんじゃないかな?ね、灰那」
「そうね……それなら、オレンジはイエローと戦うべきだと思うの。だって頭脳戦のオレンジと体力馬鹿のイエロー……普通にオレンジが勝つと思うし。それにブラックとレッド、ホワイトとブルーは似た者同士な感じがするしほぼ固定じゃない?ね、相原」
「たしかにそうだけど、山口、本音は違うよね?」
「もちろんオレンジ×イエローに萌えるためよ」
「灰那ぁああああ!!」
……などという、真面目とは言い難い話し合いが続く。
本人たちは真剣だったりするのだが……
「俺はレッドとやる。あとはどーでもいいや」
早々に会議を放り出すのは、言い出しっぺでもある玄也。
「レッドとヤる……うーん赤黒よりは黒赤の方が萌えるかしら。むしろ赤黒赤で百合っぽく…」
「灰那、だから身近な人で妄想しないの!」
そんな風にぐだぐだしている間に時間は過ぎ――
「玄也、塾の時間」
「えーサボろうぜ」
「行くぞ」
2人が塾に行く時間になり、そのまま解散となった。
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