ダメダメ戦隊 | ナノ 第15話 英雄の仕事




「先輩」

後輩が真っ青な顔で呼びかけてきた。
この後輩というのは少し情けないというか、自信の無さが困りものだ。実力が伴っていないためではなくて、新人なためなのだから仕方のないことかもしれないけれど。実力はそれなりにあると思うし。
青年は手にしていたコーヒーをデスクに置くと、ため息を吐いてから後輩に向き直る。

「どうした」
「どどどどどどどどうしましょうオレ…オレ………オレぇえええええええっ」
「何があったのか落ち着いて、手短に話せ」

尋常でない様子の後輩をとりあえず落ち着かせるためにコーヒーを渡してやった。


「……実は」

コーヒーを飲んで少し落ち着いた後輩が言うには、先程緊急の仕事が来たというのである。我が家のパソコンが壊れたから修理をお願いしたい、という電話だったらしいが問題はそこではなく、電話相手にある。

「あの鉛筆削りから戦車まで作ってるっていう『津田グループ』からですよ!?」
「『津田グループ』の社長の息子から、だろ?」
「そうですけど自宅だから社長もいるし息子さんっていったら将来社長じゃないですか!」
「…………まあな」
「なんだってあの『津田グループ』がこんな小さな会社に修理依頼するんですか!?」
「俺に聞くな」

それから自分で小さな会社と言うな、お前もその会社の人間だろうが。確かに人は多くないが、それなりに歴史があってだなあ……と説教するのは後回しにしよう。
約束の時間に間に合わなくなる。

「行くぞ」
「………うー、先輩だけでいいじゃないですか。俺留守番してますよぅ」
「……行くぞ。それに、お前もいつか1人で相手にするかもしれないから、慣れておけ」
「はーい…」


そうして、青年は津田社長の自宅に向かった。





   英雄の仕事




会社から最寄り駅まで歩くと、電車で5駅。そこから歩いて15分ほどで津田家の前に着いた。


「でっかーい」
「あんまり餓鬼っぽい反応するな」
「はーい」

子供のようにはしゃぐ後輩に注意して、さあチャイムを鳴らそうと近付く。

「そういえば先輩地図とか確認しませんでしたよね。よくわかりましたね」
「……まあ、近所だからな」
「あ、そういえばこの辺りに住んでるんでしたよね、先輩」

チャイムらしきものを押すが、音はしない。後輩はもう1度押そうとするが、青年はそれを止めた。

『はい、どちらさまでしょうか』
「3時に約束していた修理会社の中村ですが」
『お待ちしてました。今開けますね』

まだ若い青年の声と共に門が開く。後輩が感嘆の声をあげる。


「行くぞ、中村」
「あ、はいっ」




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