ダメダメ戦隊 | ナノ 第8話 馬鹿も阿呆も風邪を引く‐後編‐





「「「「記憶喪失!?」」」」

綺麗にそろった4人の声に、紅は困ったように首をかしげる。


「えっと……」

その不安そうな声は明らかにいつもの紅の様子とは違う。ヤツはだいたいの場合は変な自信に満ちていたし、時折見せた不安そうな表情とはどこか違った。



「そういえばいつもと雰囲気が違うわね……目が潤んでないのが残念だけど、これはこれでいいかも」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 大変だわ……こういうのってあれよね、頭をぽかんと殴ったら元に戻るとか、そういうのよね!」

「藤村、殴れ。そして元に戻せ」

「わかった……津田先輩覚悟!!!」


紅が普段通りでないと気色悪い。そんな本音は押し隠し、太陽に命ずる。
たしかに普段の彼にはさんざんな目に遭わされていたけれどこんな風にまともな紅というのも恐ろしい。そう、まるで嵐の前の静けさとでも言おうか。このままの状態が続くと何が起こるか分からない。そんな思いが蒼の中にはあった。

太陽が飛び出し、今にも紅に殴りかかろうとしたその時、
赤いドアの向こうで何か大きな音が響いた。


――ドスン!


「……!」

太陽の拳が紅に触れる前に、紅は音の方へ駆けて行った。……結果的に、紅は殴られずに済んだわけだけれど、つまりまだあの紅と付き合わなければならないということになる。

……しかし、ドアの向こうにいったい何があるんだ?
紅はやけに慌てているように見えた。まるで大事なものがそこにあるかのように。


「俺たちも行くぞ」

「「「了解!」」」


さっさと殴って元に戻ってもらおうじゃないか。



部屋に入るとすぐに音の原因がわかった。どうやら誰かがベッドから落ちたらしい。それを紅が助け起こしているようだった。
……いったい誰だ? この家には紅とその両親しかいないと思っていたのだが。

まず、倒れていた人間の髪の色が目に入る。赤、だ。赤い髪。そして見慣れた顔。
それは見なれた人物だった。
そして、さっきまで廊下で一緒に話していたはずの人物だった。

太陽、桃介、碧の3人は驚きのあまり言葉も出ないようだった。だから、代表して言うことにする。


「……津田、何でお前2人もいるんだ?」

そこには倒れた津田紅と、それを抱き起こす津田紅という、不可思議な光景が広がっていた。

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