ダメダメ戦隊 | ナノ 第8話 馬鹿も阿呆も風邪を引く‐前編‐4



太陽を引っ張り上げ、セキュリティを解除してもらい、開いたドアの向こうにはまた廊下が続いていた。なんて面倒臭い設計なのだろうか。絶対に住みたくない。

「突き当りを右に曲がったところにある赤いドアの部屋よ。あとでお茶持ってくわね!」

「ありがとうございます」

そうして彼女がいなくなると仲間達にも明るさが戻ってきた。別に戻らなくてもよかったのに。

「広いな!」

「玉の輿……でもあの子あんまりタイプじゃないのよねぇ」

「……津田グループって…………はあ、」


碧だけは元気がない。どうやら自信をなくしているようだった。

突き当りを右に曲がると赤いドアが目に入る。この向こうか、とため息を吐く。……長かった。
それにしても風邪を引いた津田紅とはどんなものだろうか。まったく想像できない。
真夜中とはいえ休むことをわざわざ報告しようと思える思考回路を手に入れたくらいだ、逆にまともな人間になっているのかもしれない。

あれこれ考えていると向こうから誰かがやってくる。
赤い髪に、背丈、体つき。それらは蒼のよく知っている人間に似ていた。


「……津田?」

「アンタ熱があるのに歩き回ってていいの?」

「先輩、寝てなきゃだめっすよ!」

「そうよ、とにかく寝て、さっさと治しなさいよ」

「……え? あ、はい」


珍しく大人しい紅に、やはり高熱なのだろうと判断する。
やはりまとも人間になっているのかもしれない。……それはそれで助かるような気もするけれど。


「もう、どうせお腹出して寝てたんでしょ!」

いや、海に落ちたからだと思うぞ。


「俺も落ちたけど平気だったぞ!」

それはお前が特殊なだけだ。


「……残念ね、熱にうなされてるのを見たかったのに」

本気だったのか。


紅は蒼を含めた4人をしばらく驚いたような目で見ていた。きっとわざわざお見舞いに来るだなんて考えてもいなかったのだろう。


しかし、紅は困ったような表情で、信じられない言葉をつぶやいたのだった。



「あの……みなさんはその…………どちらさまですか?」




どちらさま?

いや、だって今朝だって電話したし……

ついこの間だって5人で会って……



いや、まさか……



「「「「記憶喪失!?」」」」




後半につづく




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