ダメダメ戦隊 | ナノ
第8話 馬鹿も阿呆も風邪を引く‐前編‐
夜中の3時に電話をかけてくるような非常識な知り合いは、残念ながら1人しか思い当たらない。
携帯電話のディスプレイを確かめるまでもなく福島蒼は深いため息を吐いた。
……電源切ってやろうか。
馬鹿も阿呆も風邪を引く
「もしも……」
『ハァ、ハァ……お、俺だ…』
「……オレオレ詐欺と変態電話ならお断りしていますが」
答えながら、やはりこの男だったかとため息を吐く。
『……明日の…集会の、こと……なんだが』
蒼のくだらないジョークも聞き流し(おそらくわざとではない。単に人の話を聞いていないだけである)さっそく本題らしきものに持っていくのは、津田紅。明日の集会で集まる、Eコレンジャーのレッド――つまり、リーダーだ。
まあ集会と言ってもどうせ公園に集まって馬鹿なことをして帰ってくるだけなのだが。
「明日っつーか、今日だろ」
『ん……それ、俺、行けなくなっ――ごほごほっ』
「行けない?」
『風邪引いた…』
「あー、そういえばさっきからハァハァ言ってたな」
どうでもよさそうに呟く。さすがに怒るかと思ったがどうやらそんな気力もないらしく、紅は「じゃあな」とだけ残してさっさと電話を切ってしまった。
……しかし、風邪か。あの津田紅が。
どうやら馬鹿は風邪引かないというのは完全な嘘らしいことが証明された。なんてことだ、信じてたのに。
だが、あいつが休むことを他の誰かに報告しようと思うなんて、奇跡だ。そんなまともな思考回路、いったいいつ手に入れたのだろうか。それとも高熱のせいだろうか。
「……で、俺にどうしろと?」
携帯から聞こえてくるのはツーツーという音だけで、蒼の呟きには答えてくれなかった。
* * *
「それはお見舞いに行くべきよ!」
こんな風に張り切った少女を止めることなどできない。それを蒼はよく知っていた。
そして少女だけでなく他の2人までも張り切っている現状では、自分もそれに強制的に参加させられるだろうとたやすく予想ができた。
そうそう、今は公園で集会をしている最中だったりする。
「……そうね、あの子が熱に潤んだ目で『桃子お姉様』とか言ったら可愛いだろうし」
言いません。
「風邪って辛いのか? 俺引いたことないんだけど」
まずひいたことのない人間が存在することに驚きだ。
「……アイツの家がどんなとこなのか、興味あるわ」
自分に正直だな。
しかし蒼は紅の家に興味なんてない。その上、面倒臭いことになる予感がしたからさっさと帰りたいとも思っていた。
もちろんそれが叶わないこともよくわかっていたのだが。
「……俺もう帰」
「もちろんアンタも(あの子が熱にうなされてるのを見に)行くわよね?」
「先輩なら、津田先輩の家知ってるよな!?」
「さっさと案内しなさいよ」
……まあ、こうなるとは思っていた。
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