ダメダメ戦隊 | ナノ 第6話−1 何か生臭いの来た!!





夕日にはまだ少し早い時間。近くの高校のチャイムが放課後を告げた少し頃。
例の如く公園に現れたのはお面をつけた5人組−−Eコレンジャーである。

ブルーを除く4人は一様に顔を綻ばせている。
中でも、くしゃくしゃになった紙を握りしめたレッドはとても満足そうだった。



      何か生臭いの来た!!



全ての始まりは昨日。いつものように公園に来たレッドはゴミが荒らされているのに気付いた。
そして、ゴミの中央に落ちていた紙……

「『明日の夕方、ここで俺達と勝負しろ。アンチ』−−で、お前は本当にコレ信じてる訳?」
「当然だ」

まあ想像した通りの答えではある。そうでなければ彼等はここに居ないだろうし。
しかしこいつらはどうしてこう……素直なのだろうか。少しは他人を疑うべきなのにレッドは当然のことながらイエローは腕立て伏せを始めるし、グリーンとピンクもこの時ばかりは休戦協定を結んでいる。


「来たぞ!」


レッドの声に全員が公園の入口を見る。
そこには……5人の変人が居た。


2人は彼等と同じヨウレンジャーのお面を、それぞれ黒と白で着色している。残りの3人は布をぐるぐると頭に巻き付け、一見すると忍者のようだ。色はオレンジ、灰色、紫色でそれぞれ統一されている。


また変人が増えたよ……とブルーが冷静に思っていると、何やらレッドがワナワナと震え始めた。
どうしたのだろうと思ったが、とりあえず黙っておく。するとすぐにレッドが目を輝かせて叫んだ。


「何だ、お前達俺達のファンか!?」
「違うわ!!何でファンが勝負するんだよ!!」


至極当然の返事が黒いお面をつけた男から返ってくる。


「じゃあ6人目、7人目の仲間か!?」
「だから違うって言ってるだろ!!」


黒いお面の男が叫び返すと、またそれに赤がボケるとうう会話が続く。

なかなか良いツッコミ係だとブルーが感心していると、何故かグリーンがお面の男から距離をとっているのが見えた。何故かと聞いてみると彼女は顔をしかめて答えた。





「だってアイツ……臭くない?」




グリーンの言葉と共に風が吹く。彼女の2つに結われた髪が風に靡くのを見ながら、男から漂ってくる香りを鼻で捉え、ブルーはその言葉の意味を理解した。

アイツ、何か生臭い。

ブルーがそっと後ずさると何を勘違いしたのか男が勝ち誇ったように笑い出す。



「見ろ、ホワイト!!奴らが俺を恐れているぞ!!やっぱ俺のオーラがなせるワザ?」

「……ブラック、それは単にお前が生臭いからだ」


ホワイトと呼ばれた白いお面の男に言われ、彼は少し落ち込み出した。



「考えたらわかるだろ。一々手で引っ掻き回してたら自分の体に臭いが移ることくらい」
「そういうのは俺がごみ箱あさる前に言え!−−あ、だから昨日もお前はごみ箱を蹴るだけだったんだな!?」

彼等の会話から判断すると、ブラックとホワイト−−でいいのだろう。たぶん−−は昨日も、そしておそらくは今日も、ここに来るまでにごみ箱を荒らしてきたらしい。


なんて近所迷惑な奴らなのだろうか。
何故かレッドたち4人は凄く怖がっているように見えたがたぶん気のせいなのだろう。うん。

ブルーは現実逃避した。



「ブラック、それより本題」
「そうそう、勝負でしょ?」
「まったく馬鹿はすぐ他の事に夢中になるんだから救いようがないね」



上から順に灰色、紫色、オレンジだが……何故か最後の一人が妙に明るい声で結構酷いことを言っているように聞こえた。


「そうだった!勝負だEコレンジャ…――ぐえっ」

急に叫び出したブラックの声が止む。


見ると、ホワイトが彼の襟首を掴んでいた。


「ブラック……本題の前に名乗るくらいしろ。常識だろ?」


妙に低い声。怒ったようなオーラがホワイトの背後に見えたように思えたがやっぱり気のせいだろう。ブラックも納得しているし。
ブルーはまた現実を見なかったことにした。


「そ、そうか…悪いな、俺の名前はさか…いてっ」
「誰が本名って言った」


どうやら本名を言いかけたらしいブラックの頭にホワイトの拳が降る。
ブルーが2人の関係をあれやこれやと――ペットと調教師か、それとも息子と母親か、と――想像していると、急に自信なさそうになったブラックが口を開く。








「…………えっと、俺達はトラッシャ……シュ……?」





どうやら自分たちの名前を覚えていないらしい。いや、これは単に噛んでいるのだろうか?
どちらにしても……カッコ悪い。


「ブラック、頑張れ」


何故かホワイトは突っ込まず、ブラックを見つめている。
親の愛情なのか?あの、子供にしてみたら凄く的外れにしか感じない親の愛情なのか?


「えっと……えーっと……」


さすがに見ていられない状態になってきたブラックに、女性の声が助けに入る。


「トラッシェンジャー」


声の主は灰色の布を巻いた女だった。


「反(アンチ)エコ戦隊、トラッシェンジャーです。あなた方と勝負しに来ました」





   ***



「勝負は基本1対1。勝ちが多い方の勝ちだ。誰と何をやっても自由だが、」
「俺はレッドとやる!」
「……と、うちのリーダー(?)が言っているので、レッドはブラックと。あと問題なのは女性なんだが…」
「うちもそっちも2人だし、女同士で適当にやっとけ」


お…女同士?
うちもそっちも2人?

思わずブルーを始めとする4人が凍り付く。ただピンクだけがとても嬉しそうに声をあげた。



「あら…わかってるじゃなぁい」


……今度はこの声(女にしては明らかに低い声)に敵側の方も凍り付いた。
そりゃあピンクがオカマだとは思うまい。

しかし、体格とか見たらわかるのではないだろうか?遠目だったからかなあとブルーはこっそりと溜息を吐いた。

グレーとホワイトとオレンジはそれほど驚いていなかったから3人の観察眼は良いのだろう。
いや、それとも他の2人が悪いのか……。

それにしても、何で自分はここに居るのだろうか。たしかに凄く面白そうな展開ではあるけれど、同時にすごく面倒な展開でもあることは明白だった。
勿論、ブルーに逃げることなどできない。


「みんな、負けるなよ!」
「「「おう!」」」
「……おー…」











かくして、Eコレンジャーとトラッシェンジャーの戦いが幕を開けたのであった。






   続くっぽい






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