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2011/12/20 16:04

大好きだった人がいた。いや、過去形じゃない。フラれてなお、嫌いになれない人がいる。だって大好きなのだから、仕方がない。諦めなくちゃいけないのに簡単に忘れられない。それができたら今日までの間にとっくにしていた。
じゃあ思いきり泣けばいいのだけれど、あいにく俺は素直じゃない。
結婚するのだと。子供ができたのだと告げるあの人に、良かったねと笑えるくらいに。ホント、素直じゃない。
あの人は俺よりずっと大人で。優しくて。大好きだった。同性とかそんなこと気にならなくて。ずっと片想いのまま、あの人に気付かれないままだったけど、それでいい。

放っておけばじんわりと溢れてきそうな涙をごまかそうと、顔をあげる。あ、信号。
赤、か。
「赤信号は行けってこと」
だったはず、と。うまく機能しなくなった頭を動かして足を踏み出す。
が、強く腕を掴まれて進めない。
振り返れば呆れ顔の親友がいた。
……あ、間違えた。
進むのは、赤じゃない。青だ。
そんな当たり前のことを間違えるとか、俺は相当参っていたらしい。
だいたいなんでコイツがいるんだ。あ、そうだ、フラれたことをずっとグチってたんだ。そんなことも忘れていた。
……これは、思っていたよりずっと酷い状態で。
親友にも迷惑かけてしまったんだろうな。
「俺は、お前のこと好きだから、迷惑なんて思わないし、むしろチャンスだと思ってるから」

……あれ?

なんだろう、少しだけ。
少しだけだけど、ドキドキする。

「ずる、い」
「ずるくても汚くてもいい」

親友の目は真剣にこちらに向けられている。
真っ直ぐすぎて、そらせない。
――顔が熱い。
そんな俺を見て、親友はいつもみたいに悪戯っぽく笑った。

「嘘でも好きだって言ってごらん」

言うかバカ!
……でも、少しだけ、大好き『だった』人を忘れられそうな予感がした。



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