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ノーライナ ノーライフ(伝勇伝・ルーライ♀)
2011/06/02 22:27

朝、
目覚まし時計が鳴り始めるとすぐに目が覚める。元々目覚めは良い方であるが、最近目覚ましを変えたため、格段に良くなった。
録音機能のついたそれは大好きな彼女の声で「おはよう」と繰り返す。
目覚めは良くなったものの、なかなかその声を止めることができず、しばらくぼうっと彼女の写真を眺める。

睡眠を愛する彼女のことだから、まだ眠っている頃だろう。彼女の夢の中にほんの脇役としてで良いから登場したいものだ。
ようやく目覚ましを止めて、写真の彼女に「おはようございます」と告げる。


朝ご飯はトーストとハムエッグ。元々朝は和食派だったが、彼女の友人との会話から彼女がパン派であると知り、合わせてみた。
食後のコーヒーも彼女好みの甘さに調節。しかしこればかりは飲ませることもできないので実際どこまで彼女の嗜好に近づけているか気になるところだ。

制服を着終わってもまだ学校に行くまで時間がある。予習をしようとノートを開くと授業中にした落書きが目に入り、思わず苦笑した。



そろそろ時間だ。
ノートと教科書をしまうと、戸締まりとガスの元栓を確認してから、玄関も施錠する。

今日は燃えるゴミの日だったはずだ。


「あれ、ルークくんまた間違えたの?」
「ええ、うっかりプラスチックゴミを持ってきてしまって」

誰もいない頃を見計らって自分のゴミをおくと、『間違えて持ってきてしまった』ゴミを一度持ち帰る。
さすがに怪しまれるので毎日はしない。
ほんの時々、『間違える』のだから仕方がない。


しばらく待っていると彼女の家のドアが開く。

「いってらっしゃい、ライナ」

彼女の母親はやはり彼女に似ていた。けれど彼女の方が美しいと思うのは、若さではなく単に彼女を愛しているからだろうと納得する。
眠そうに目を擦る彼女は、母親に小さく「いってきます」と呟くと、ふらふらとおぼつかない足取りで歩き出す。

最初は溝に落ちるのではないかと心配していた彼女の足は、ふらついているのに妙に正確に、ゆっくりと学校へ向かう。正面から見ればしっかりと両目が閉じていると知っているのに、信じられない。

しばらくするとキファ・ノールズが彼女に声をかける。彼女はおそらく怒られることを恐れて目を開けたところだろう。
キファが色々なことを話す間、彼女はうとうとしながら相槌をうつ。よく見る光景といえる。



『おはようございます』


少し前に調べた彼女のメールアドレスに、メールを送る。二つのアドレスが持てるというのが便利ではあるが、彼女は元々ルークのアドレスを知らないし、この先も知ることがあるかという疑問が残る。
それでもこのアドレスは彼女のためだけのアドレスであると思えば感慨深い。そうこうしているうちに返事が来る。

『おはよう』

しかし彼女はどうして正体不明の人間に律儀にメールを返すのだろうか。やはり彼女は優しいから。

『小テストだるい』

そういえば彼女のクラスは歴史の小テストがあるのだった。

『歴史、頑張ってください』

返事を送りながら、ふと思う。彼女はこのアドレスをなんと登録しているのだろう。







放課後になるとまた彼女は教室で眠っている。仕方がないので声をかけることにした。

「あ、ルーク」

目を開けた彼女が自分を認識する。それが嬉しくて微笑んだ。

「送りましょうか」
「んー『一緒に帰りましょうか』ならいいけど」
「じゃあそれで」
「ん」

時々こうして彼女を家まで送るようになったのだけれど、彼女がルークをどこまで意識しているのかわからない。そう悪いイメージを抱かれているとは思わないのだが。どうだろうか。




家に帰るとデジカメの写真を確認し、いくつかプリントする。部屋に沢山飾るというのもやってみたかったが、さすがにそれを他人に見られるのも嫌なので日替わりでお気に入りの写真を一枚、写真立てに入れて飾っている。
数枚の写真を新たにアルバムにしまうと、隣に立てかけてあったノートにいくつかの情報を書き込む。


『今日の彼女はイチゴ柄のパンツをはいていた』



ラジオからは彼女の寝言が聞こえてくる。どうやら帰ってすぐに眠ってしまったらしい。
今から昼寝をすれば彼女と同じ夢が見られるかと思ったけれど、先に夕飯の支度をすることにした。





ノーライナ ノーライフ

(彼女がいないと生きていけない)



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