漏れ鍋に着いた後は、ママ達の言っていた知り合いと合流した。
彼はとっても大きな大男で、ハグリットと名乗った。
ハグリットは明るかったし、話も面白くて直ぐに懐いた。
そして彼は痩せたぼさぼさ頭で、眼鏡の掛けた少年を紹介した。
「ハリー・ポッターだ。名前、ハリーも今年入学するんだ、仲良くしてくれな。」
『勿論!よろしく、ハリー。』
「う、うん。よろしく、えっと…。」
『苗字名前、名前って呼んで。』
「よろしく、名前。」
にこっと笑って見せると、ハリーも笑ってくれた。
随分緊張してたみたいだから、魔法にはなれてないのかな。
私は、失礼かもしれないけど、彼の"生き残った男の子"の話を知っていたから、少し意外に感じた。
私のイメージだと、我が儘で傲慢な感じだったんだけど。
でも、実際会ってみて全然違うことがわかった。寧ろこっちの方がいい。
勘違いしてごめんね、ハリー。
「じゃあ、そろそろ行きましょう。」
ママの一言で、皆は裏庭の煉瓦に向かった。
トントン、煉瓦を杖で叩く煉瓦が動きだし、ダイアゴン横丁への道が開いた。
ハリーは煉瓦が勝手に動き出したのを見て、そして目の前に広がる世界を見て驚いていた。
『吃驚だよね。私も最初は驚いた。』
「驚くどころじゃないよ…。」
ハリーはキョロキョロと目を動かす。
「初めは制服ね。名前、教科書は私達が買いに行くから、貴女達は2人で制服を仕立てに行きなさい。」
『ん、分かった。ハリー、行こうか。』
「でも僕、お金持ってないよ。」
「ああそうだ。まだハリーとグリンゴッツに行ってなかったな。すまんが、先に行っといてくれや。」
『そっか、うん。分かったわ。』
それからママとパパ、ハグリットとハリーと別れて、一人マダムマルキンの店へと急ぐ。
「あら名前、いらっしゃい。今日はホグワーツの制服の仕立てかい?」
『あれ、分かりますか?』
「こないだ話してたの、近々名前に手紙が来るかもって、あんたの母親とね。」
マダムマルキンとそんな会話をした後、私は台に乗せられされるがまま。
「いらっしゃい、坊っちゃん。何か用かい?」
「ホグワーツの制服を仕立てに。」
「それじゃあ此方へおいで。」
ああ、懐かしい声がするなぁ…ぼーっとしている内に、隣に誰かが立った。
ふわりと漂ってきた香り。
年が明くる度嗅がなくなった香り。
いずれにせよ、私の大好きだった香り。
『兵太夫…?』
やっぱりあの"何か"は当たっていた。
「名前…」
切り揃えられた前髪もキッと上がった眉も黒い丸い目も、変わってない。
ただ、前と違うのは、珍しく驚いた顔をしていることだけ。
『やっと会えたね。』
「ふん、別に僕はどっちでも良かったけど。」
そう言ってそっぽを向く兵太夫。
でも、嘘だってバレバレだよ。
耳凄い赤いもの。
『それでも、私は嬉しいよ』
「…っ!」
『あれ、兵太夫、泣き虫になった?』
「ちが…っ!?っ違うから。僕、もうは組の皆と会ってた。でも名前だけは何年経っても会えなくて。」
『…。』
「心配、した。」
『兵太夫…。』
「だから、もう僕が心配するようなことはしないでよね、バーカ。」
悪戯っぽく笑ってみせた兵太夫。
うん、もう大丈夫だよ。大丈夫。
『やっぱり変わってないなぁ…』