じゅうに
雲一つない晴天である。
相変わらず念仏じみた退屈な授業を終えた私はいつものようにまとわり付いてくる悟飯とビーデルさんを振り切り、ぶらり、街を歩いていた。
「あ、クレープ屋さんだ」
以前ビーデルさんに教えてもらったクレープ屋。リーズナブルな値段の割に底までたっぷりと入っているクリームやフルーツ、見栄えのいい見た目。そのおかげか今ではこの店は、女性に人気のクレープ屋になった。
「小腹すいたし、買っていこ」
なんだか一緒に冷たいアイスも食べたい気分。苺やブルーベリー、クリームがたくさん入った上にバニラアイスが乗っているクレープを注文して、受け取ったあとは近くの公園のベンチに座ってもそもそと頬張った。
ふと、以前の騒動の結末を思い出す。
『私は……!私が好きだったベジットを偶像にしたくないッ!!』
そう言って消えていったナオさん。“帰りたい”と強く願ったからか、あの瞬間忽然と姿を消した時は結構焦った。
彼女は今、元の世界でちゃんと元気に過ごせているだろうか。
「もーらい!」
ぼーっと地面を啄く鳩を眺めていると、突如背後から伸びてきた腕がクレープを持つ私の手ごと掴みあげ、後ろに引いた。
びっくりしすぎて勢いよく後ろを振り返ると、でっかい大口を開けて私のクレープに齧り付くベジットさんがいて……って!
「ちょっと!!アイスまだ一口しか食べてないのに!!誰が一口でアイス全部食っていいっつった!?」
「え、シュエ齧ってたの?やった、間接キスだ」
「ふざけんなよ」
そもそもなんでこの人がここにいるのとか、思うことは色々あるけどまずは私のクレープだ。この男、たったの一口で半分以上持っていきやがった。怪物かよ。
「あーぁ…」
まぁ、食われたものはしゃーないか。
…ナオさんが元の世界に帰ってからというものの、ベジットさんはとても上機嫌だ。気が付くと今みたいにどこからともなくくっついてきたり、布団に潜り込んでいたり…。
そもそも最後に関してはマジでヤバいと思う。
残り半分のクレープを適当に口に押し込み、ゴミ箱にラップを放り投げてベンチを立つ。
……立とうとしたんだけどなぁ。
「…ちょっと」
「ん…シュエ、いい匂いする」
「ヒェッ…」
今ぞわぁってした、ぞわぁって。
後ろから抱きしめるように抱えられ、首筋に鼻を当ててふんふん匂いを嗅ぐベジットさんが厄介すぎて死にそう。いくら人がいないからってここは公共の公園で、人がやってくるのも時間の問題なのだ。
だから早急にやめて頂きたいのだが…!!
「あぁ、ベジットさん。それは僕に対して宣戦布告していると受け取ってもいいのでしょうか」
ギャー!!クソややこしい奴来たぁぁあああああ!!!
撒いたはずの悟飯がベンチに座る私の前に立ち塞がる。そんな彼の横にはビーデルさんが腰に手を当ててベジットさんを睨み付けていた。
眼光よ…。おおよそ女子がする目じゃない…
「ほんっと、油断も隙もない男ね。そう言うのを節操無しって言うのよ」
「ビーデルさん…!」
なんて恐ろしいことを言うんだこの子は…!!さては怖いもの知らずだな!?
「俺が節操無しなのはシュエだけさ。昔も今も、これからもな」
怪しく笑うベジットさんに、悔しそうにしかめっ面をする悟飯、忌々しそうに眉を寄せるビーデルさんに囲まれた私は数秒後、白目を剥いた。
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これにて「もし逆ハー狙いがやって来たら」は終了です。
書きたいことを無茶苦茶に詰め込んだので、結構文脈やらなんやらが支離滅裂だと思う(いつもの事)。
設定ページに書いている割に登場しないキャラとか、いたと思います。すみません。
なんか、悟飯ちゃんに限らずベジットさんもヤンデレと言うか、謎の執着心を抱かせたらくそ厄介そうとか思ったのが事の発端なのです。
逆ハー狙い主ちゃんは、初めは軽い気持ちで神様に逆ハー補正付けてもらって、それなりに楽しめたらって思っていただけなのです。けれど段々欲が出てきて、さらには自分が知る原作に夢主ちゃんと言うイレギュラーがいて、戸惑って、変に夢小説の知識があるから「殺られる前に殺らねば…!」的な気持ちが出てきて夢主ちゃんを陥れようとしちゃうわけです。
本当は別に悪い子ではない。はず。
一番の心配事は、ちゃんとベジットさんや悟飯ちゃんがヤンデレできてたのか。
ただのアホか頭のおかしい子になってないか心配です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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