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きゅう






「痛くしないでね」

「わかってるって」

「いきなり入れないでね」

「わかってるから」

「ちゃんと声かけてね。入れる時は入れるぞって言ってね…!」

「……………」


フリーザ軍が地球から去っていくのを見送ったあと、まだ30分経ってなくて元に戻れないゴジータさんに外れた間接を入れてもらおうとしていた。
だって、元がお父さんとベジータさんなんだよ!?大雑把の化身じゃん!不安でしかないもん!


「うー…」

「…しがみついてていいから、じっとしてろって」

「おぅ…」


お言葉に甘えて、目の前で揺れる黒いベストを引っ掴む。
うぅ…これじゃあ注射嫌いなお父さんのこと言えないよぅ…!
あーでも、注射より断然マシか。だってほら、注射はやったことあるけど関節外れるとか前世含めて人生初だし!仕方ないよね!未知の痛み怖いし!しかも入れる時痛いって聞くし!

ぎゅーッと目を閉じて身を固くした。謎の緊張感。


「、…ほら、入れるぞ」

「おう、来い…!」


そっと大きな手が二の腕を掴む。軽く持ち上げられ、次の一瞬でかこッと肩から関節がはまる音がした。

…………………………え、もう終わったの?


「……思いのほか痛くなかった」

「だから言っただろうに」


拍子抜けである。
そもそも今思い出したんだけど、お父さんは大雑把に見えて存外器用だった。私の髪切ったのもお父さんだったしね。


「シュエ」

「ん?…………………」


名前を呼ばれて見上げたら、思いのほかゴジータさんの顔が近いところにあって普通にびびった。どうやら関節はめるのにびびりすぎてベストどころかゴジータさん本体にしがみついていたらしい。てへぺろ。


「…………アリガトウゴザイマシタ」

「はぁ…。お前は自分の知らない事に関してはとことん怖がるよなぁ」

「どゆこと」

「そのまんまの意味さ。俺が見てきた限り、関節外れるの生まれて初めてだろ?怖いもの知らず通り越して死に急いでたシュエが怖がるものなんて、めったになかったからな」

「ぐぬぬ…もう死に急いでないもん」

「ついさっきブロリーの前に飛び出してきただろうが」


ああ言えばこう言うゴジータさんは厄介すぎて思わずしかめっ面になってしまう。なんか、変にお父さん要素があるからこっちも強く言えないんだけど。

ぶっすーん。めいいっぱい頬を膨らませてゴジータさんを下から睨めつける。無駄にムキムキで男前な顔がしやがって…


「…何はともあれ、シュエに何もなくてよかったよ」

「わ!」


再びゴジータさんにむんぎゅッと抱き締められた。目の前にムキムキの胸筋があって私どうしたらいいの。見せつけられてるの?別に嬉しくない。
けど、心配かけたらしいほんの少しの罪悪感が邪魔して振り払えないや。

あ、ちょ、誰が頭ぽんぽんしていいって言ったの!?許可出てないよ!

何はともあれ、好き勝手やられてますが何か。


「…正直な話、昔にシュエがセルに殺された時の事が結構なトラウマになってるんだ」

「セル?…あぁ、あの時か」

「ドラゴンボールでお前を生き返らせることができないって神龍から聞いた時、本気で絶望した。目の前でお前の首が飛んで、段々体が冷たくなっていって」

「……」

「もしあの時みたいにまたシュエがいなくなってしまったらと思うと…。本当に…怖かったんだ…」


抱きしめる腕に力が籠った気がした。ゴジータさん…いや、お父さんも、私と同じように失うことを酷く怖がっていたんだって、知ってしまった。
お父さんが私を戦わせたがらない理由も、理解してしまった。けど、それでも…


「それでも私は、戦うよ」

「シュエ」

「でも勘違いしないで。私はもう、死ぬために戦うんじゃないよ。生きるために…この世界で出会った大好きな人たちと一緒にいるために生きるの」

「……全く、その頑固さは誰に似たんだろうな」

「心当たりはあるんじゃない?」


そう言うとゴジータさんは困ったように笑った。
不意に目の前のゴジータさんが二重にブレる。弾き出されるようにしてベジータさんが現れ、そしてムキムキはムキムキでも、ゴジータさんとはまた違う感じの筋肉に変わっていて、驚いて体を引いたもののさっきと同じように背中をホールドされていて身動きが取れなかった。


「どうやら30分経ったみてぇだな」

「むぐッ…お父さん…苦しい…」

「んお?悪ぃ悪ぃ!」

「はぁ…悪夢だった…」


ぱッ!と私から離れたお父さん。今にも死にそうな顔をしたベジータさん。三者三様のリアクションに思わず笑うとベジータさんにガチ睨みされた。なんでやねん。


ぽん。またまた後ろから頭に手が乗せられる。今日はいっぱい頭をなでられる日だ。この歳になって嬉しや恥ずかしや。


「お父さん、なに?」

「ん?いや、なんとなくなでてみたくなっただけだ」

「なんだそれ」

「へへ。…さ、帰ろうぜ。どっか別の星に行っちまったブロリーに、必要なもん持ってってやらねーとな」

「私もついて行ってもいい?」

「あぁ、いいぞ」


いつの間にやらちゃっかりと飛行機に乗り込んでいたらしいブルマさんたちのところに急いで向かい、さっきまでの激しい戦いが嘘のように静まり返った空を飛ぶのだった。





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これにて劇場版ブロリーは終了です。
悟空さんはゴジータになっていた時、ブロリーさんと戦うシュエちゃんを見てセルに殺された例の光景を思い出してしまいます。それに追い打ちをかけるように自分が放ったかめはめ波の前にシュエちゃんが飛び出すものだから心臓が縮みあがるわけです。あろうことか自分が娘を殺しそうになって頭がぐちゃぐちゃになって、どうしようもなく怖くなって混乱したまま気付いたらビンタしていたのがゴジータさんでした。

だいぶ端折ったり脈絡なかったり、ずいぶん短期間で書き上げたのでお見苦しい点がいくつもあるやもしれません。すみません。

ただ、ゴジータさんがかっこよすぎて早くシュエちゃんと絡ませてみたかっただけなんです。

そして大人になればなるほど生意気さが増し増しのシュエちゃんですが悪気はありません。ただ図太くなっただけなんです。

ここでのゴジータさんは、悟空さんでもありベジータでもありゴジータさんでもあるわけで、その中でも悟空さんの要素が強めに出ているという解釈で書かせていただいています。
なのでゴジータさんなのにずいぶん父親臭がすごかったかと思われます。

お付き合いありがとうございました。
気になることなどあれば気軽に質問などをどうぞ。






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