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10




「すぴー…」

「うぐッ……ほ、骨が折れるッ…」


深夜。じっちゃんの寝言を聞かながら私は今生死の境をさ迷っていた。それもこれも私を絞め殺さんばかりに抱きつく悟飯のせいである。寝顔は天使みたいに可愛いのに腕の力が規格外だ。なに、この子、私になんか恨みでもあんの。


「ごはんうぐぉ…ッ!し、死ぬぅ…!お願いだからおぎでぇぇえ…!!」

「夕方お姉ちゃんが逃げたりしなかったら僕はこんなことしないよ。あのまま僕に食べられてればよかったのに」


ぱちり、と目を開けた悟飯はいけしゃーしゃーとのたまった。こ、こいつ…やっぱり狸寝入りだったか…ッ!


「まだそんな知識付けなくていいから!てゆーか寝ろ!寝て!ほら!ねんねねんね!」

「あんまり僕を子供扱いしてるとチューするよ?」

「どうかおやすみになってくれませんか悟飯くん」

「しょうがないなぁ。お姉ちゃんがおやすみのチューしてくれたらね」

「貴様」


ダメだ、このまま続けると堂々巡りになるのは目に見えてる。もう寝よ。もう知らね。おやすみおやすみ。
そんでもって目を閉じつつちゃんと悟飯の背中ポンポンしてあげてる私まじインフィニティ。お姉ちゃんの仕事ちゃんとこなしてるよお母さん!
ぶぅ垂れてた悟飯だったが、しばらくそうしてあげてるといつの間にかスヤスヤと寝息を立てていた。ね、寝た…やっと寝た…!これで私も安眠できる!ひゃっほい!


「おね、ちゃ…」


夢にまで私出てきてるのか…
私のこと大好きなのは嬉しいんだけど、必死になる方向性間違ってるからね。


「…全く、こうやって寝てると可愛いのに。なんであんなに黒くなっちゃったんだか」


苦笑いを一つ零して気持ちよさそうに眠る悟飯をそっと抱き寄せた。まぁ、なんだかんだこうやって甘やかす私も私だけどね。





「カカロットぉおおおおおッ!!!」

「!?」


すんごい叫び声と共になにかの破壊音で私は飛び起きた。わ、私の安らかな眠りが一瞬だった…。今日はもう徹夜を覚悟したほうがよさそうかも。


「お父さん…?うわッ」

「いッ!?」


そして視界いっぱいにこちらに迫り来るお父さんが寝てたであろうひしゃげたベッドが、ブロリーさんの手によって私たちに降りかかって来たのだった。咄嗟に悟飯に覆い被さって怪我をしないようにする私ってばもうお姉ちゃんの鑑だと思う。


「ふんッ」

「「ぎゃッ!!」」

「おらー!無茶すんなぁ!!」


遠退くお父さんとブロリーさんの声。ちょ、なんでこんな…
ほろりと涙がちょちょ切れた。


「厄日だ…ッ!!」

「ぎゃあああ!!シュエと悟飯が下敷きに…!待ってろ今助けてやるからな!!」

「クリリンさんそっち持ってください!」

「おう!」

「お、お姉ちゃんってば人前で押し倒すだなんて大胆…」


私の下で恍惚と頬を染める悟飯に頭を押さえた。帰りたいんだけど。


「まだ言うかあんた…!」

「お前ほんといい加減にしろよ」


ごちぃんッとクリリンさんの拳骨がついに悟飯の脳天に振り下ろされた。今のはあんたが悪いよ。


「いったぁい…」

「今のってブロリーだよな…昼間と大違いじゃないか」

「俺、何だか嫌な予感がします…パラガスが何かを隠しているのは間違いないと思います」

「ですよね…いい人だとは思うんだけど。とにかくもっと詳しく調べた方がいいと思うんです。シャモ星の人たちにもう一度聞きに行ってみませんか?」

「だな」


絶妙に悟飯から私の盾になってくれるクリリンさんの背中がこれ以上にないくらい頼もしく見えた。


「チッ……」

「(舌打ち…!?)…クリリンさん、しばらくカメハウスに厄介になってもいいですか?」

「ブルマさんとこ行け。俺じゃ心もとないし、あっちの方がベジータもトランクスもいるし安全だぞ」

「シュエさん、いつでも来ていいですからね」


トランクスさんの言葉に涙がちょちょ切れそうになった。
私ちょっと放浪の旅に出ようかな…
クリリンさん越しににっこりと笑う悟飯を見て切実に思った。






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