まぁ、幼女ですから
びゅーん、と筋斗雲に乗って広大な海を駆ける私たちは、海面を跳ねるトビウオや私たちの隣を並行して飛ぶカモメたちに子供らしくめいいっぱいはしゃいでいた。
「うわ、また跳ねた!!見て見て、あそこ!!うお、イルカだ!!イルカがいる!!」
「シュエー、はしゃぎ過ぎて転げ落ちんなよ?」
「多分大丈夫!!ほら悟飯、カモメさんにばいばいは?」
「ばいばい!」
あぁんもううちの弟ほんと可愛い。天使。見てこの零れんばかりの笑顔!!まじ尊いわ。
私の足の間にちょこん、と座る悟飯の頭を高速なでなでしてお父さんを振り返る。
「ねね、お父さん。亀仙人のじっちゃんのおうちはまだ?」
「もうすぐだぞ。ほれ、あれがそうだ」
海のど真ん中にある小さな島。そこにピンク色の可愛らしい小さな家があって私は人知れず再びはしゃいだのだった。人形のおうちみたい!可愛い!
「楽しみだなぁ!」
「ぼ、ぼくちょっとキンチョーしてきた…!」
「だーいじょうぶだよ!おねぇがついてるんだから!ね?」
「う、うん!」
「2人とも、挨拶はちゃんとするんだぞ?」
「「はーい!」」
よっこいせ!とお父さんに抱えられて小島の砂浜に降り立つ。わ、すごい、砂がサラサラしてる!
頬をなでてくる悟飯の尻尾をつついていると、がちゃり、と緑のドアがあいた。そこから出てきた3人と……か、カメ?は、お父さんを見るなり驚いたように声を上げた。
あ、私の記憶が正しければこの女の人はブルマさんじゃないのか!?ひぃい恐れ多いブルマさんが目の前に!
「孫くん!久しぶり、元気だった?」
「まぁな」
「…あれ、ねぇ、孫くん。その子たちどうしたの?」
お父さんの腕から降りて事の成り行きを見ていると、彼らの視線が私と悟飯に向いた。わわ、こりゃ緊張するわ…ちょ、悟飯、尻尾を私の脚に巻き付けないで…めっちゃくすぐったい。
「子守りのバイトでも始めたのか?」
「うん?オラの子だぞ?」
「「「………え!?ええぇぇぇええええ!!?!??!」」」
「ご、悟空の子供!?しかも2人!?」
「あぁ、そうだよ」
盛大に絶叫した3人は恐る恐る私たちに近付いてきた。とん、とお父さんに背中を押される。
「こんにちは。シュエと言います。以後お見知りおきを」
「は、はぁこれはご丁寧にどうも…」
「…悟飯、おめぇも」
「あ…こ、こんにちは」
ぺこり、と礼儀正しくお辞儀をした悟飯に目の前の3人と1匹は思わずといった感じでつられて頭を下げた。それより私は隣のカメさんが気になって気になって仕方ないんだけど。
「こっちが姉ちゃんのシュエ、んでもって弟の孫悟飯って言うんだ」
「孫悟飯…なるほど、死んだじーさんの名前を付けたのか」
「うん」
「へぇ、ねぇシュエちゃんと悟飯くんは、何歳かな?」
「今年で6つになります」
「えっと…4さいです」
「あら、孫くんの子供にしちゃ礼儀正しいのねぇ」
そりゃあお母さんにしっかりと教育されてますから。まぁ私の場合精神年齢がうん十歳ってものあるけど。見た目は子供頭脳は大人なスーパー幼女ですから。
ふぅん、とブルマさんは興味深げに私たちを見つめた。ちょ、そんなに見ないで…美人に見つめられると緊張して頭パーンなりそう…!
頭上で何やらお父さんたちが話をしているが、私の意識はすでにカメさんに向いているのだ。カメさんカメさんちょっとおいでよ!
じぃっと見つめていたからかカメさんはのそのそと私たちの元へやって来た。うお、本物のウミガメが目の前に…!やっべぇ思ったよりでかいな。
「えへへ」
よしよし、とカメさんの頭をなでる悟飯の頭を私がなでる。何これギャンワイイ。
「ね、ねぇねぇ、背中にのってもいい?」
「いいですよ、どうぞ」
「しゃ、シャベッタ…!!」
喋るカメだなんてそれこそ初見だ…
びしり、とカメさんに戦慄いていると、悟飯はおねえちゃん、のせてのせて!と腕を引いてきた。しょうがないなぁ。ちょっと待って。
「よっこいしょ。はい、落ちないでね?」
「うん!カメさん、あっちいこ!」
のっそのっそと悟飯を背中に海に向かっていくカメさんを見送る。うーん、中々にシュールだな、これ。
きゃっきゃと押し寄せる波で遊ぶ悟飯とカメさんを、少し離れたところで眺める。…うん、子供は元気だな。あ、私も今6歳児だったわ。
「…ね、ねぇ孫くん。シュエちゃんって本当に6歳?」
「そうだけど…それがどうかしたか?」
「いやな、悟空。あの子見てるとなーんか年齢詐欺られてる気がして…」
「シュエはちっせぇ頃からしっかりしてたからなぁ。面倒見はいい方だと思うぞ?生まれてからずっと悟飯の面倒を見てたのはシュエだったし、チチだって安心して任せられるって言ってたからなぁ」
「そ、そうなんだ…」
うっすらと背後で聞こえる会話に苦笑した。年齢詐欺って…やっぱもう少し子供らしくしてないとダメかなぁ…
…いや、でもこれ以上はダメだ。私が耐えらんない。
おねえちゃん!と駆け寄ってきた悟飯を受け止めてどうしたものか、と人知れず頭を抱えるのだった。
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