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手をつないだ




病院の待合室では、これまでにないくらいの緊迫した空気に包まれていた。いつもは気が抜けそうなくらい豪快なお父さんでさえ、そわそわと落ち着かなさげにしている。


「う〜…」

「…悟空、そったら気ぃ張ってっと後々滅入るぞ?」

「わかってっけど…やっぱ緊張しちまって…」


お母さんが病室に入って数時間。男2人はずっとこんな感じだ。
あぁ、もう!ここは、女である私がしっかりしなくちゃ!!


「おとーしゃん、おぃちゃん!めそめそしちゃ、めッ!!」


べしッ
幼女渾身の一撃をお父さんの膝にお見舞いする。くそ、逆に私の手が痛くなったよ…どんだけ固いんだこの人の膝は。


「…そうだな、シュエの言う通りだ。オラたちがこんなんじゃ、チチに怒られちまうもんな!」

「うん!」

「こういうとこ、チチにそっくりだ!」


わしわし、と豪快に牛魔王さんに頭をなで繰り回される。ちょ、頭ぐわんぐわんってなってるんだけど!!取れる…首が取れるよ…!!

それから3時間が経った。眠気に負けそうだった私は、突然響き渡った泣き声に飛び上がったのだった。


「ぎゃああああああああああん!!!!」

「!!??」

「お、」


ウィン、と開かれたドアから看護婦さんが出てくる。そして思わず立ち上がっていた私たちに目を向けると、満面の笑みで言った。


「ご家族の皆さん、お待たせしました!元気な男の子ですよ!」

「ーー!」


ついに、ついに生まれた…私の弟が、悟飯が…!


「ねぇ、おねーしゃん!あかちゃんみてもいーい?」

「うん、いいよ!けど、あまり大きな声は出さないようにね?」

「はい!」

「あ、シュエ!」


我先に駆け込んだ病室。看護婦さんが苦笑いしていた気がしたけど、気のせいだよね!

病室のベッドには、お母さんと、その脇に小さな小さな存在が横になっていた。


「…おかーしゃん、」

「あぁ、シュエちゃんだか。こっちさおいで」

「う、うん」


一歩一歩、ゆっくりと近づく。そしてようやくベッドのそばに来たとき、ひょいっと体が宙に浮いた。


「ほら、こうすりゃ見えんだろ?」

「おとーしゃん、ありがと!」


お父さんに抱き抱えられたことによってよく見えるようになったベッドの上。生まれたての、しわくちゃな赤ちゃん。感慨深げに眺めてると、牛魔王のおじいちゃんがはっはっは!と笑った。


「シュエも、生まれたときはこんなんだっただよ!」


まぁ、そりゃそうだよね。これでも精神年齢は高いですから。


「うぇ…あー…」

「うお、お、大きな声出しちまったか…?」

「よしよし、泣くな泣くな」


お母さんがあやすものの、弟は一向に泣き止む気配を見せない。
私はお父さんにお願いして、弟の近くに連れて行ってもらう。


「こんにちは、おねーちゃんだよー!」

「う…?」

「えへへ」

「あぶー」

「お、泣きやんだぞ!おめぇすげぇな、シュエ!」

「でしょ?」


えっへん、と得意げに胸を張って見せる。するとお母さんが、シュエちゃん、と私を呼んだ。


「おかーしゃん?」

「シュエちゃん、弟が呼んでるだよ」

「え?」

「ほら」


振り返ると、弟が私に向かって一生懸命に手を伸ばしていた。


「えと…」

「手を握ってあげるだよ」


お母さんに導かれるまま手を弟に伸ばす。きゅ、と弱々しく握られた指に、胸のうちからぶわり、と温かいものがせり上がってきた。何かに心臓を鷲掴まれたような、そんな感覚。


「あう、」

「…!!」


赤ちゃんの私に手を伸ばしたお父さんの気持ちが、わかった気がする。こんなにも胸が温かくなるなんて。

…この子は、絶対に私が守ってみせるよ。脆くて儚いこの存在を、きっと。





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悟飯ちゃんがようやく生まれました!
多大なる捏造が所狭しと…

捏造は管理人の十八番でございます、どうか頑張ってお付き合いくださいませ!




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