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オブシディアン流星群



「悟飯」


閻魔殿で待ってくれていたらしいお父さんの瞬間移動で神殿に戻ると、ずっとずっと聞きたくてやまなかった声に迎えられた。クリリンさんたちに囲まれ、少しクセのある髪の毛を揺らしながらはにかむお姉ちゃんの胸に勢いよく飛び込む。心臓のあたりに耳を当て、ちゃんと鼓動しているか確認する僕の頭をなでながら苦笑いするお姉ちゃん。

あぁ、生きてる…ちゃんと、生きてる…


「クリリンさんたちやナメック星のみんなにね、ナメック星でドラゴンボールを集めてもらったの。みんなには感謝をしてもし足りない。私、今までずっと悟飯やお父さん、お母さん、ピッコロさんもみんなみんな、みんなの気持ちを踏みにじっていたんだなぁって。ようやく気付けたんだ。…この命、もう絶対に粗末になんかしないよ」

「ぐす…あ、当たり前だよ…何言ってるの?次そんなことしたら、いくらお姉ちゃんでもぶっ飛ばすからね…!」

「あは…それは嫌だなぁ」


ナメック星でドラゴンボールを集めてくれたのは、お父さんやクリリンさん、ピッコロさんはもちろん、ヤムチャさんや天津飯さん、チャオズさん、トランクスさん、そして以外にもッベジータさんまでもがお姉ちゃんのために動いてくれたらしいとこっそりデンデから聞いた。
こんなにもお姉ちゃんはみんなから大切にされているんだよ。わかった?


「悟飯の言うとおりだぞ、シュエ。お前が生き返れないって聞いた時は本当に焦ったんだからな!!」

「でもこうして生きてるじゃないですか」

「誰のおかげだと思ってる」

「…本当に感謝してますよ」


おどけたように言うお姉ちゃんにその場にいるみんなが笑った。後でお父さんに聞いたことなんだけど、僕が夢幻層に入ってからというものの、こっちでは1週間がたっていたらしい。どうりでお姉ちゃん以外のみんなの服装が違ったわけだ。
あのときまだ叶えていなかった神龍の2つ目の願いは、クリリンさんの要望によって17号と18号の体にある自爆装置を取り除くことに使ったらしい。薄々思っていたんだけれど、クリリンさんはやっぱり18号のことが好きみたいで、そんな18号もこの1週間で随分とクリリンさんと打ち解けたみたい。全部本人が吐きました。

唐突に、ヤムチャさんがぱんッと手を打ち鳴らした。


「…さ、悟飯も帰ってきて、シュエもちゃんと生き返ったことだし」


みんなで笑いながら顔を見合す。僕とお姉ちゃんは体を離し、手を繋ぐ。そしてお姉ちゃんはもう片方の手でお父さんの手を握った。


「帰りますか!」


誰かともなく、声高らかに叫んだそれを合図に、それぞれの帰るべき場所に向かって一斉に神殿から飛び降りたのだった。





*****




「トランクスさん、帰っちゃうんだね」

「えぇ。俺の時代の人造人間たちを倒すためにも帰らないと」

「今のお前なら、きっと倒せるさ」


今日は未来に帰ってしまうトランクスさんのお見送りの日だ。短い間だったけれど、彼との思い出は数えきれないほどたくさんある。出会い方はお互いよくなかったけれど、今ではこうして打ち解けてるんだから不思議だよね。


「向こうが落ち着いたら、一度報告しにここに来るつもりです」

「報告だけじゃなくって、たまには私にも顔を見せにきなさいよ」

「はい」


少し離れた場所からブルマさんたちのやり取りを見守る。
…本当、寂しくなっちゃうなぁ。

しばらくぼうっと見ていると、クリリンさんやお父さんとおしゃべりしていた悟飯が私に気付き、大きく手を振った後に手招きをした。それがとても眩しくて思わず目を細める。


「お姉ちゃん、こっちおいでよー!」


なんだか変な感じ。未だぶんぶんと手を振る悟飯をぽけぇっと見ていると、不意にとんッと背中を押される。驚いて振り返ると、久方ぶりに見る姉さんが満面の笑みで立っていた。姉さんはぱくぱくと口を動かした後、にっこりと微笑んで空気に溶けて行った。

…ずっと、姉さんに嫌われたと思っていた。でもそれは間違いだったんだね。あぁもう、私ってば早とちりしすぎ。


“頑張ってね”


「……ありがとう、姉さん」


たった一言。けどその一言にたくさんの思いが詰まっている。茜が繋いで、悟飯が掴んで、姉さんが押してくれて、みんなが導いてくれたこの命。もう絶対、手放しはしないんだから。ぐッと手を握りしめ、そろそろ出発するであろうトランクスさんを見送るために悟飯たちのもとに駆けたのだった。





end


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