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遊びに来たよ!



「シュエちゃーん、お友達が来てくれただよー」





「…で、何しに来たのさ」

「そんな冷たいこと言うなよぉー」


俺泣いちゃうよ?そう言って露骨に私をチラ見しながら顔に両手を当てる友人に固く握り締めた拳を見せた。彼は姿勢を正した。
そもそもこいつは私が季節ごとの講習で通っていた塾の友人で、結構仲がいい間柄だと思う。いろいろ事情を知らない彼に超サイヤ人を見せるわけにもいかず、私は久しぶりの黒髪である。てゆーか家教えたっけ。まぁいいや。それよりあんたなんでこんなところにいるの。


「だってよぉ、シュエってば最近めっきり塾に来なくなったじゃん?今までそんなことなかったから心配でさぁ」

「ふーん、へぇー、ほぉー」

「…なんだよ、その疑わしい目は」

「本当かいな、って思って」

「友情って一体何」


うっうっ…と鬱陶しい泣き真似をする友人はずこーっとジュースをすすった。汚ぇな音たてんなよ。


「…それよりあんた、こんなところにいてもいいの?」

「んぁ?なんで」

「…テレビでセルゲームのことが放映されてから、街中の人たちが都市を離れて行ってるじゃない。一応あんたも都市圏の人間だし、逃げなくてもいいの?」

「そんなのどこにいたって一緒だろ?俺んちの家族はみんなそうさ。どうせあと何日かで殺されるなら、残りの人生をのんびりしようってな。なに?シュエってば俺の事心配してくれてんのー?」

「あぁ、自意識過剰って怖いね」

「そこは嘘でも頷いとけよ。んで、そう言うお前は?なんでまだパオズ山にいんの?」

「んー、別に深い意味はないかな。正直私もあんたの意見と同じだし、そもそも、少なくとも私はセルを必ず倒してくれる人を知ってるからねぇ」

「え、誰それ。教えろよー」

「いーやーだーよーん」

「何それ酷い」


お前は相変わらず女々しいな。
友人からそっと目を逸らして窓の外を見つめた。家族みんなで食卓を囲んで、ピクニックして、遊んで、友人と会ったりして。あまりにものんびりしすぎているから、たまに忘れてしまう時があるけど、あと数日もすればセルゲームは始まってしまう。その時に私たちはセルを倒すことができるのだろうか。…いや、できるのかじゃなくて、やらなくちゃいけない。
少なくとも、私が守りたいと思ったものはこの手で必ず守り通して見せる。


「…シュエ?おーい、シュエー」

「ぅえッ!?な、なに、どうしたの」

「いや、なんかぼうっとしてたから。大丈夫か?」

「大丈夫だし。…んで、結局あんたは何しに来たの」

「塾に来ない友達の顔見に来たってだけじゃダメか?」

「知らん」

「えー、そりゃないわお前」


けらけらと笑う友人。うーん、こいつのこういうところは嫌いじゃない。私が遠回しに言葉を濁したのもきっと気付いているだろう。それを言及してこないことにどれほど救われているか。こんな性格だけど、よくできた友人だ。


「さてと、俺はそろそろ帰るよ」

「もう?もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」

「いや、いいよ。シュエんちに行くって言ったけど、なんせ今こんなご時世だから心配してるかもしれないかし。それに…」

「それに?」

「…いや、なんでもない。んじゃな」

「山の麓まで送ろうか?」

「だーいじょーぶだって!お前ってなんだかんだ心配性だよな!じゃ、またな。………頑張れよ」

「!!…うん。また」


友人が見えなくなる頃に超サイヤ人になった私はふっと息を吐き出した。やっぱりあいつは気付いていたんだ。私がセルゲームに参加することとか、その他諸々。実をいうとあいつが”またな”って言ってくれたのが嬉しかったりしてる。本人には絶対に言ってやんないけど。


「ぬー…ッ、はぁ、あいつのためにも、頑張らないとなぁ」

「おねーちゃん!」

「のぁあああッ!!」


突然ぬるッと背後から現れた悟飯に恐れ戦いた。なに、あんた。今めちゃくちゃ怖かったんだけど。てゆーかどっから…


「ま、まじびびったし…」

「今の人って…」

「あぁ、塾の友人だよ。塾に来ない私を心配して来てくれたみたい」

「へー」


相槌を打つ割になんか興味なさそうだな。なに、どうしたってのさ。そんなぶっすーってふくれっ面しちゃって。可愛いなもう。おねぇがなでこなでこしてあげるね。
よしよしと悟飯の頭をなでてあげる。いつもなら嬉しそうに笑うのに、今日に限ってはそんなことはないらしい。まだほっぺが膨らんでるんだけど。え、私どうしたらいいの。


「………」

「…(ぶっすー)」

「……あー、うん。悟飯や。君は一体私にどうしてほしいのよ」

「さっきの人のこと、お姉ちゃん好きなの?」

「は、」


思わず素っ頓狂な声が飛び出た。好き?私があいつを?何を言ってるんだこの子は。そんなの天地がひっくり返ってもあり得ないから。てゆーかあいつはお互いいい友達として接してるからそーいうのないし。

…で、なんでそんな話になったの。


「だって、お姉ちゃんあの人とずーっと喋ってるんだもん」

「そりゃ喋るでしょーよ。友達だもん。無下にできないよ」

「…なんか釈然としない」

「…あーもう!いつまでもそんなぶっさいくな顔しないの!!ほら、さっさと家に入る!」

「うわッ!ちょ、お姉ちゃん押さないで!転ぶ…! 」

「なんにせよ、悟飯がそんな顔してるのは私も嫌だからさ、ね?おねぇがおいしいおいしいパンケーキ焼いてあげるから、それで機嫌治してよ」

「…しょーがないから、機嫌治してあげる」


さっきとは打って変わって嬉しそうに笑う悟飯に私はただただ大量の疑問符が飛び交うだけだった。結局この子は何がしたかったのか。
どんどん悟飯がわからなくなってくる今日この頃。






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