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なんか目が笑ってないんだけど





「ふぐッ、むぐぐ、ふむむむむ」

「あむ、もごッ、もごごご」

「「「…………」」」


次々と料理を平らげていくお父さんと悟飯に私たち一同は絶句した。私の身長をとうに超えたかさばったお皿の数々に戦慄する。なんだろう、普段から見慣れているはずなのにどうしてこうもドン引きするのか。きっとあれだあれ。お父さんだけじゃなくて悟飯も一緒になってバクバク食べてるから余計にそうなるんだ。だってこの子普段こんな風に食べないもん。


「もごご」

「…悟飯、口の周りが悲惨…」

「むぐ」


…なんか、これだけの量を食べている光景を目の当たりにしてると胃もたれ起こしてきたんだけど。私あっち行っててもいいかな。


「ふもッ!」

「ぎゃッ!!な、なんやねん君…!」

「ふもももももッ!!もも、もごごッ!!」

「ちょっとねぇ誰か通訳!!通訳呼んで!!」

「…んっぐ」

「ちゃんと噛んだのかお前」

「お姉ちゃんはここにいるの!」


片手に骨付き肉、もう片手に私の帯を引っ掴んで見上げてくる悟飯に遠い目をした。私がいる意味よ。じとり、と悟飯を見るもどこ吹く風である。仕方なしに浮かせていた腰を地面に降ろした。


「…悟空、ちょっといいか?」

「ん?」

「お前たち、ちゃんと飯は食っていたはずじゃないのか…?」


あ、それ思った。私だってちゃんと食べたし、ちなみに言うと後から入って来るであろうお父さんたちのために余ったカレーを器に入れて冷蔵庫に突っ込んだ覚えだってあるもん。お父さんはきょとん、と悟飯と顔を見合わせると、口に入ったラーメンをそのままに喋った。


「ふんぬぬぬ、ふもももも!ふごっふほほほもごぬぬぬご!!」

「……」


天津飯さんがフリーズした。あまりにも口いっぱいに頬張りすぎて理解できないお父さんの言葉に。ねぇ、本当口に入れたまま喋るのやめようよ。みっともないよ。


「おい、口の中のもんちゃんと飲み込んでから喋れ!」

「…ずりゅりゅりゅりゅーッ!!ごっくん!」

「…うん、お父さん、ちゃんと噛んでから飲み込もうね」


視界の端っこでピッコロさんがふるふると震えた。


「もちろん食ってたぞ!食ってたけど、オラも悟飯もろくな料理できねぇからなぁ。こんなうめぇもん久しぶりだ!」

「そういえば冷蔵庫にカレーがありましたよ!おいしかったなぁ」

「あぁ、食べてくれたんだ」

「あれシュエが作ったんか!?」

「うん、そうだよ。私1人で食べきれなくてさ、どうせお父さんたち料理できないだろうと思って置いておいたの」

「本当かぁー!助かったぞ!!サンキューな!」

「…別に、食べきれなかっただけだし」

「ツンデレごちそうさま…!」


ばちーんッと顔を覆って悶絶しだした悟飯からちょっとだけ距離を置いた。この子性格変わった…?もうなにがなんだかわかんないよ。

腹いっぱい!!ごちそうさん!と後ろ手をついたお父さんは、後回しにしていたトランクスさんの話に耳を傾けた。…うん、私はあっちに行っていよう。全員で聞く必要もないし、何たって私目の当たりにしてるからね。聞き入る彼らの邪魔にならないようそっと抜け出して、神殿の淵に腰かける。投げ出した足をぷらぷらさせながら外界の様子を見下ろした。
相変わらず外界は逃げ惑う人々でごった返しているう。バカだなぁ、どこにいたって一緒なのに、逃げるだけ無駄だよ。そんな暇があるのなら少しでも残りの人生を娯楽に使ったらいいのに。でもこれが当たり前か。人間の生きようとする本能っていうかなんというか。

まぁ、私たちはセルに負けるつもりはさらさらないけどね。

そうやって見下ろしていると、不意に耳になにかが吹き込んできて全身が鳥肌だった。り、立毛筋がめっちゃ仕事してる…!!耳を押さえて声にならない悲鳴を上げながら立ち上がると、したり顔で悟飯が私を見上げていた。


「……悟飯、」

「お姉ちゃんってば、何回呼んでも全然反応してくれないんだもん…」

「だからってねぇ…あぁもうわかったから、わかったからそんな顔すんなよぉ…」


私が泣かせたみたいじゃないのさ…そんなチワワみたいにおめめをうるうるさせんなってば…あぁもう…ッ!!
思わずひしっと悟飯を抱きしめてしまった。負けましたよ、負けましたともえぇ。悟飯の可愛さに完敗しましたよそれが何か。何か問題でも。…でも、ギュッてするのはいいんだけど服がピッコロさんだから肩のやつ超邪魔…こう…ゴスッて、なるよね。てゆーかなったよね。でも似合ってるよ。可愛さに磨きがかかってるよ。


「……」

「お姉ちゃん?どうかした?」

「いや…以前に増してムキムキになったなと…痛感しまして…」

「そう、かなぁ…自分じゃよくわかんないや」


む、と力こぶを作った腕をガン見した。き、筋肉が…筋肉が悟飯を侵食していく…あぁ、切ない…小さい頃のぷにぷにが恋しい…ぷにぷに…ぷにぷにぎゅってしたい…そうだ、今度ブルマさんとこに行ってトランクスくん抱っこさせてもらおう。


「…なんでそんな不服そうな顔するの」

「…今の悟飯、全体的に硬いもん」

「そんなこと言ったって…」


今度は悟飯が不服そうな顔をする番だった。いやだって…ねぇ?


「むぅ…そんな顔するお姉ちゃんにはこうだ!」

「うぎゃッ!!ちょ、ごは…うひゃひゃひゃ!!やめッ、いひー!!」

「おりゃ!おりゃおりゃ!!おりゃーッ!!」

「ひぃい…!!やめ、やめろぉぉおおおおッ」

「やめなーい!!」


くすぐってくる悟飯もろとも床を転げまわった。何度か逃走を試みたものの、悟飯は足で私の体を挟み込んだ。に、逃げられない、だと…!?てゆーか脇腹…!脇腹はやめうひーッ!!


「おーいシュエ、ごはーん。帰るぞー?」

「おおおお父さん助けふにゃぁああーッ!!」

「逃がさないよお姉ちゃん!!」

「…何やってるんだお前らは」


ピッコロさんが転げまわる私たちを見て深い溜め息を吐いた。ちょ、後生ですから見てないで助けてくださいお願いしますまじでピッコロさぁああああんッ!!
トランクスさん苦笑いしてないでヘルプミーぃいいいいい!!!


「…お、俺はちょっと…」

「もう他人なんて信じなはぁああああ!!」


最終的にベジータさんが助けてくれました。やっぱこの人いい人だよ。人は見かけによらないんだよ。それを痛感した瞬間であった。


「あああありがとうベジータぁあああ…!!わ、わらいすぎて腹がよじれるかと思った…」

「…ふん」

「(せっかくお姉ちゃんを独り占めして遊んでたのにいろんな邪魔が入ったよもう本当やってらんない)」

「(ぞ…)」


…なんか、悟飯の顔がえげつないことになってるんだけど気のせいかな。うん、気のせいだそうだそう思っていよう。お父さんを盾にして人知れず震えた私であった。






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