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誘っているように見えたので、つい



昨日遅くまで夜更しをしていたのが祟ったのか、昼間はとても眠かった。
あまりの眠気に何をしても手付かずという事態に雪路が半泣きで私を寝台に押し込んだ。
私的には非常に不服なのだが、あまりにも雪路が泣きすがりついてくるので仕方なく大人しく寝台に寝転んだのが大体2、3時間前くらいだと思う。


......さっきからずっと頬を撫でられている気がするんだ。
飽きもせずにずっと。するするするする。そして時折ふにっと唇に触れられる度に何度びくりと肩を揺らしそうになったか。


そろそろもういいだろうと思い、まだ若干重い瞼をのろのろと上げる。


「.....................」

「アーッ」


やっぱりというか何と言うか...。こいつも大概しつこいよな。私が寝転んでいる寝台に肘をついて、未だ至近距離で私の頬に手を添えて固まる白瑛殿の従者。
思わず溜息を吐いた。


「青舜...」

「あーっと......何でしょう紅玲様!!」

「開き直ってんじゃねぇよアホ」

「あだッ」


べしこッとデコピンをお見舞いしてやる。加減なしにしたせいか、青舜は額を抑えたまま寝台の上でのたうち回った。ちょ、ここ私の寝台...


「紅玲様ひどい!すんごく痛かったんですけど!!」

「そうか、それはよかったな」

「むぅ...」


子供みたいに頬膨らませても可愛くないんだよ。


「全く...。で、お前はここに何しにきたんだ?まさか私の頬を撫でくりまわすためだけに来たとか言わないよな?」

「そそそそんなまさかオホホホホホ」

「気持ち悪い」


どうやら本当に頬を撫でくり回すためだけに来たようだ。忙しなく動き回る青い目がそう物語っている。
いつものように私の部屋に遊びに来たものの、私が寝ていたからこれ幸いとこういう事態に及んだらしい。全て青舜が吐きました。


「ごめんなさい」

「もういい、お前の奇行は今に始まったことじゃないし」

「じゃあ許してくれるんですねさすが紅玲様大好き!!」

「うわッ、ちょ、何するんだバカッ!!」


勢いよく飛びついてきた青舜を支えきれず2人で寝台に雪崩込んだ。
こいつは、青舜はいつもそうだ。私が皇女だからと言って物怖じせず、こうやって対等に接してくれる。それはまるで、友達とは少し違う未知の存在のような。


「...いつものようにシバかないんですね」

「私を暴力女みたいに言うな」

「変わらないでしょー。いでッ、ほら!そういうところ!!」

「さぁ、知らんな」


そう言うと青舜はめいいっばい、それこそ風船のように頬を膨らませた。女か、こいつは...


「...で、結局のところなんで私の頬なんて撫でていたんだ。何も楽しいことなんかないだろうに」

「...聞きたいですか?」

「へ、」


す、と青舜の手が再び頬に伸び、そのまま唇に指が触れた。
...嫌な予感。





誘っているように見えたので、つい。



「知らんわそんなもん!!」

「ぎゃッ!ちょ、雰囲気壊すとかどういうこと!!」



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