日の落ちた森で、それでも美しい化け物の姿はよく見えた。徐々に閉まっていく気道に、俺は地面に爪を立てる。

化け物は苦しむ俺の表情を一瞬たりとも見逃したくないのだろう、瞬きもせずに俺を凝視していた。宝石のように輝く赤い瞳が俺を憎悪と悲哀の入り混じった瞳で見つめる。

何故、化け物は悲しそうに俺を見るのだろうと、そう思った。しかし、酸素不足に陥った頭では上手く考えることが出来ずに、思考は四散する。

一瞬、死んだ祖母の顔が過ぎった。優しかった祖母。俺は祖母が大好きだった。ほろり、と生理的な涙が頬を伝う。俺は祖母が死んでしまって悲しくて悲しくて堪らなかった。会いたいと何度も願った。

化け物もそうだったのだろうか。会いたいと願い続けて、この森でたった一人、待ち続けていたのだろうか。


視界が霞んで、化け物さえも曖昧になる。
祖母に会いに行こう、と思った。優しい祖母は、きっと怒って、それから泣いて抱きしめてくれるに違いない。

俺は、そっと目を閉じた。






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テーマ「人外ファンタジー」
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