自殺部3 | ナノ

その場にいた数名の視線の先には、凶器を持った知らない男。
そして隣でへたりこんでいる女。悲鳴。

これは夢だって、わかっている。
それは夢では無かったと、『知っている』。

・・・わかってはいるが。
耳を塞ぎたかった。
目を瞑りたかった。
でも、俺は過去の夢を見ているわけで。
俺の体はあの時と同じ動きしかしない。
言うことも、やることも、見るものも同じ。

あの男を、本当は殺してやりたい。
なにもできなかった俺を、殺したかった。
そして夢ですらなにもできない俺を、殺したい。

目の前には、
見覚えのある、死体が二つ。
目の前には、
ナイフを持った男が、一人。
視界の端には、
金属バットが、一つ。
目の前には、
見覚えのある、死体が三つ。
視界の端には、
震える手が二つ。

『なにか』に胸を斬られた。
『なにか』を殴った感蝕。
『なにか』が音を出す。
低い音を。空気の漏れるような音を。

なにか、背後で音がした。
誰かが、俺を抱きしめる。
「警察だ!―――」

視界の端には、鏡。
見覚えのある、知らない奴が赤に塗れて映っていた。


次ページへ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -