純情にふれる、



「…いいか?」

「ちょ、ちょっと待っ…心の準備が…」

互いの息が触れ合う所まで来ると、決まって隼は顔を真っ赤にして待ったをかける。これで何度目だろうか。しかし、ここは隼の気持ちを優先したいと思う。なんせ初めてのキスなのだ。その気持ちが分からぬ訳ではない。

「…」

暫くその火照った顔を見つめていると、やがて意を決したように緩やかに瞳を閉じ始めた。愛らしく薄く開いた唇を、早く食んでしまいたいと思いながら、ひくりと震える背に腕を回し、頬に指を添える。

じっくりと一呼吸置いて、いいか、ともう一度問い掛けると、こくりと隼は頷いた。ふと見やった縋るように両の手でワシのシャツの袖を掴んでくる姿にどうしようもない位の庇護心が湧いてきて、図らずも柄にも合わぬ「大丈夫だ、」などという言葉をかけてしまう。

赤らんだ貌を目に焼き付けながら、此方も徐に目を伏せると、丁寧に口付けを施した。

ちゅ、と触れ合った柔らかな唇。きっと碌に手入れなどしていないのだろうが、青年特有というものだろうか。滑らかな感触は女の其れをも思わせる。

もう暫く吸い付いていたかったが、呼吸もままならずに酸欠に陥りそうな目の前の少年の姿に免じて許してやろう。

口付けが終わった後、ワシズ様、慣れてますね、などと照れくさそうな表情で隼は言っていたが、本当は内心、どういうものが隼にとって見てくれの良いものなのかと考えていた、などという事は口が裂けても言わぬつもりだ。

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