Gift | ナノ

白猟と雪原
凛とした、冬の朝のような女だった。
冷たいようであたたかい。




「これからよろしくお願いいたします、本部よりG5配属となりますなまえ大佐であります。」

『なまえ』の名前は知っていた。同期のヒナから優秀な部下がいる、と何度か耳にしたからだった。品行方正の模範生だと。
己と似た髪色、とも言っていた。だからだろう、この女に冬の雪原のような印象を持ったのだ。

「上官に意見をしたのです、それだけです。」

G5に転属となった理由は簡単だった。口答えしたんだろう、仲の悪い将校に。
何だ噂と違って似た者同士か、と言ってやればなまえは「どうしても曲げられない信念があったのです」と話すのだった。

「ヒナ大佐にご迷惑お掛けしたとは重々承知しております……けれど、どうしても。」

手持ち無沙汰になる時間が出来た。なまえと二人のみの室内で、ならばと問うてみたのだ。『何故意見しようとしたのか?』と。そして返ってきた答えに、頷く。
譲れねェモンがあったのか、と聞けば是。
ならばそれも良いだろう。

「……『そういうもん』を持ってる人間は強い。」

嫌いじゃねェ、そういう奴は、と紫煙というか白煙というか……その類のものを吐き出してやる。

「そう、です……か、」
「意外だ、っつう顔だな。」
「クソ真面目だ、とか。頑固者だ、とか。私も我ながら生き難い性格をしてると考えてましたので、」

そんな風に褒めていただけるとは露とも思わず。
そう驚き混じりに呟いた女は……女の瞳は、瑞々しい光を湛えていた。

「だから、腐るなよ。」
「ありがとうございます、スモーカー中将、」

きっかけらしいきっかけは『これ』だったのだろう。まっすぐな女だった。

「こんな難しい性格でも……認めていただけると嬉しいものですね。」
「……あァ。」
「そう、ですね。すこしだけ、少しだけ分かった気がします。」
「あん?」
「中将が皆さんに慕われている理由です。」

女は朗々と語り出す。決して行儀の良い連中では無いこのG5の野郎共は、一歩見方を変えれば賊よろしく凶悪面。見てくれに比例して中身も捻くれた連中ばかりだ。
だのにそれでもこの准将には恐怖からの従順でなく、敬慕の念が確かにあった。

「スモーカー准将は本質を見抜くのがお上手でいらっしゃるのですね。それでいて褒め上手です。」
「……ガラじゃねェな。」
「本質を悟り、彼らを見捨てず部下として導いてらっしゃるから、彼らも応えるのでしょう。」

女は清々しく納得した顔で「尊敬いたします、一人の人間として。」と言葉を締めくくるのだった。
雪原の光のような、思わず目を細めてしまうような眼差しで。









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