IF? | ナノ

盃兄弟と夕飯
*ドーン島の子どもがまとめてやってきたよ。

  さて、このなまえという大学生。祖母が生前暮らしていた一軒家を譲り受けて一人暮らしをしていたのだが、最近一人暮らしでは無くなっている。

「なまえー!腹減ったー!!」
「あぅっ!」

  大学から帰って玄関を開けた瞬間、全力の歓迎が腰回りに激突する。鞄が落ちて当たらなくてよかったと思いつつ見下ろすと黒髪の頭が一つ。麦わら帽子は奥にあるらしい彼は顔を上げてにぱっと忽ちに笑顔を見せるのであった。

「おかえり!」
「ただいま、ルフィ君。サボ君とエース君は?」
「奥。」

  靴を脱ぎながら居間へと歩を進めればテレビに釘付けになっている残り二人がいる。何やら真剣に眺めているのはお気に入りのアニメでは無く何処ぞのデパートの中継だった。

「ただいまー。」
「!…お、おかえり、なまえ、」
「…っくり、した…帰ったら言えよ…」
「ごめんね、ビックリさせちゃった。…今からご飯作るから、ちょっとだけ待っててね。」

  余程集中していたのか、全く気が付いていない様だった。どもる二人に小首を傾げるなまえだが深く考えず荷物を置き、台所へと向かって行く。

「なまえ。なんか手伝うこと、ある?」
「ありがとうサボ君。…んー…じゃあお願いしてもいいかなあ?」
「うん。」

  彼女の後を決まって追ってくるのがこの金髪の少年であった。どんぐり眼でじい、となまえを見上げて問い掛けてくる姿は健気でその視線を向けられた方は心がほっこりとしてしまう。
  レタス千切ってくれるかな?と言えば破顔したので、なまえは椅子を流し台まで寄せるのだった。

「サボ君は気配り上手だね。」
「…そっか?」
「うん、大助かりだよ。ありがとう。」

  並んで手を動かしながら、微笑むなまえを再びじっと眺めるサボは『やっぱりなまえは水色だ』と内心呟いているのだった。エースよりおれの方がなまえの事をよく知っているし、こうやって一緒に過ごしてる時間も多いんだ。とウムウム一人ごちている。

「なまえ、今日の飯なに?」
「唐揚げですよー。」
「おれ一番デカイヤツがいいっ!」
「あぅっ!」
「おいこら、ルフィっ、なまえ包丁持ってるから危ないだろ!」

  ドタドタという足跡が響いて後、衝撃再び。腰回りにぎゅうぎゅうと引っ付くのは末っ子である。無邪気の塊になまえはくすくすと鈴を転がした様な笑い声を上げてしまい、持っていた刃物を一度置く。

「はあい、了解しましたよ。」
「絶対だぞ!」
「お任せくださーい。」
「…なまえ、ルフィ甘やかしすぎだろ。」

  体を捻り、ひっつき虫と化した末っ子の頭をよしよしと撫でるなまえにハァ、と溜息を吐くのは共に台所に来ていたエースである。マキノにさえもこんなにへばり付いたりしないのにと、モヤモヤした感情を持て余しながらルフィの首根っこを掴むのだった。
  兄弟、である筈なのになんだろうかこの感情は、サボに対してもモヤモヤは膨らんでいくし何なんだおれは!とエースはうがー!と唸りたくなってしまう。

「はぁ…おまえら、向こうで待ってろよ。」
「いやだ!」
「嫌だ!」
「何でだよ!?」
「あはは、仲がいいなあ。」

  流石兄弟、となまえは自由になった体で再び包丁を握るのだった。この家にこの子達が来たのもきっと何かの縁、早く帰れる事を願っているけれども今だけはこの穏やかなひと時を噛み締めさせて欲しい。

「なーなー、なまえ。」
「はあい?」
「なまえはさ、ピンクと水色どっちがいいんだ?」
「ば、ばかこらルフィ!」
「…ちょ、何で今言うんだっ!」

  はて、いきなり話が飛んだ。ルフィの口走る事は大概こんな感じではあるが今日はやたらと残り二人が反応している。

「エースとサボがよー。ピンクと水色どっちがいいかって、さっきまでずーっと言ってたんだ。」
「「!?」」
「ピンク?水色?」

  なまえにあげるならどっちにするかって、言ってたんだ!とこれっぽっちも悪びれず口にしたルフィは相変わらずニコニコして「おれは白がいい!」とのたまうのであった。

「あ、あのだな、アレだ。テレビでなまえが着たらいいのにっていうスカートが映ったんだ、新作ですって言ってて。ふわっとしててなまえみたいに柔らかそうで似合うって思っただけで別におれ、へっ変な事言った訳じゃねぇからな!」
「ばか!あのピンクの短いだろ!それになまえはそっちより水色の方が似合うって言ったじゃねえかっ。花が付いててそっちの方がいい、それになんだよその『ふわっ』て!よくわかんねーよ。それに変な事言ってないってそれ、変な事言う人間が口走るんだぞ!」
「エースヘンタイなのか?」
「違っげえ!…違うよな?」
「おれに聞くな!」
「…ほらなー。こうやって止まんねーんだ。」

  キョトンとしていたなまえは、成る程通りでテレビに釘付けだったのかと納得するのだった。でもなんで自分のスカートの話になったのだというのか。

「おれがデカくなったら一杯なまえに買ってやっからな。」
「一緒に買いに行くんだ、手ェ繋いで行こう。」
「なまえ、おれの方がいいよな、」
「おれの方だろ、な、なまえ。」
「え、えーと…」

  やたら真剣な眼差しなのは二人とも同じ。逸らす事なく真っ直ぐなまえを見つめて彼女の応えを待っているのだった。何故か負けたくないという気持ちがどくどくと心から溢れ出してなまえが掬い取ってくれるのを待っている。
  二人は気付いていないし、まだこの感情に名前を付けていないというのに。
  それでも応えを望んでいるのだった。

  今日の夕飯は遅くなりそうだ。


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -