怖くて逃げ出す

男の子って、何考えてるか分からない。
それが、怖い。

気を許した途端、変わっていく。
だから私は男の人は苦手。
というか、怖い。

高校2年生になって、なんで女子高に行かなかったんだろうって今更後悔をし始めてる。
正直に、母親に男の子が怖いって話しておけばよかった。

けど1年間で、男子が近寄らないようにする方法を編み出した。

まずは不愛想にすること。
近寄るなオーラ出すこと。
それだけで男子は寄ってこなくなる。

男嫌いだって噂が立ってるけど、それはそれでいい。
それで男子が近寄らないのであれば。

でも、これだけ近寄りがたい雰囲気を出してる私に近寄ろうとする輩が現れることになる。


いつもの日常。
授業中、退屈な授業の中で私はノートに落書きをする。
描いたのは好きな漫画の登場人物。
その人物は男の子。
その男の子に眼鏡かけたり髪型変えてみたりして、ノートを埋めていく。
けどそれも飽きてきて、筆箱の中にある小さくラミネートされたクローバーを眺める。

このクローバーは、三つ葉。
普通は幸福の象徴でもある四つ葉を大事にするものだけど、10年以上生きてきて今だに四つ葉に出会ったことがない。
だから四つ葉が見つかるまで、私はこの三つ葉を大事にしている。

「(今日も帰り道に四つ葉を探そう)」

小さい頃から始めて、今では日課になってる四つ葉のクローバー探し。
見つからなくても、探している時間はけっこう好き。
なんかこう、わくわく感があるから。


自分の世界に浸っていると、チャイムが鳴って現実に引き戻される。
学級委員の号令に合わせて礼をして、ふぅと一息ついた。

「絵、上手いのな」

「え?」

「ノートの絵」

不意に声がした方を振り向けば、隣の席の…御幸君?がこっちを見てた。
別に自分の絵が見られたことはいいんだけど、話しかけられたことにびっくりして声が出ない。

ほんとにただ上手いと思って言ったのかもしれない。
他意はないのかもしれない。
けど私は怖くて何も言えなかった。

そこへ御幸君とよく一緒にいる…えっと、倉持君、までやってきて私を見てくるもんだから、耐え切れなくて私は逃げ出した。




「倉持の顔怖くて逃げ出したな」

「なわけねーだろ。
つかお前知らねーの、あいつ男嫌いって噂だぞ」

「へぇ…でもそうは見えなかったけど」

「何言ってんだよ何も言わずに逃げ出したのが何よりの証拠だろ」


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