キスに込めた



 お互いの顔が近づいて、ああ、キスされるんだなと目を閉じる。ゆっくりと体温が高めの大輔が近づくのを感じて。
 柔らかな唇は額に落ちた。かきあげられた髪が落ちる。呆然と見上げると大輔は朗らかに笑う。
 キスする直前まであった融け落ちるような甘さはすっかりと消えている。

「お前ってホント可愛いよな」
「その目、節穴なんじゃないの」

 やっと脳内が再起動した。どうやら下心の無い行為だったらしい。タケルがついうっかり考えすぎて先走っただけ。
 それはそれでえっちなことを考えているのはタケルばかりみたいでちょっと気に食わない。

「大輔君」
「ん?」

 顔を近づけて、キスをしたいと示すと大輔は目を閉じた。目を閉じると昔のようなあどけなさが見えてくる。

 過去の大輔と今の大輔は直線状の時間に存在している。ちょっとずつ変わっていくけど、それはタケルも同じ。素直に変化を認めるのはまだできないけど、前よりも拒否反応は少ない。
 結局のところ、今目の前にいるのもタケルのことを好きだといった大輔なのだ。そして、タケルが憧れる大輔だ。2回目のデジタルワールドでの冒険のことも忘れたりしたくない。
 大輔が覚えているかはちょっと不安だけど、思い出を忘れてしまっても経験は、成長した本宮大輔という人間は消えない。そしてタケルを好きと言ったことも。

 そっと瞼の上にキスをした。願わくはこの瞳に少しでも長く僕が映っていられますように。






 追記
お題が大輔にタケルが妖艶に祝福、友情のキスをされる、とのことなので、タケルは勝手に憧憬のキスをさせました。








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