恋より甘いアイ

※短編の「私が祝いに来た!」と同じ設定

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「あ!オールマ…」
「緑谷少年!ちょっといいかい?」

◇◆◇

「オールマイト見つけ…」
「緑谷少年!!話があるから来てくれ!」

◇◆◇

「ねぇオールマイト!!」
「緑谷少年!?また無茶したのかい!?」


ここ最近…否、オールマイトが教師を務めてから幾度となく繰り返されてきたやり取り。雄英高校へきてオールマイトを見つけて走り寄っても、オールマイトはある生徒にかかりっきりでまるで相手にされなかった。


「もーーー!!彼女放っておいて生徒を優先するなんて酷いと思わない!?」
「学校なんだから当然でしょう」
「せっかく愛しの白さんが会いに来てるのに!」
「そもそも何で来てるんですか」
「雄英って楽しいものね!」
「帰れ」


昼休みの職員室で白の愚痴を聞かされ、相澤は深い溜息をついた。生徒の相手だけでも疲れるというのに、より疲れる存在が隣にいるせいで機嫌は良くない。


「生徒に嫉妬だなんて大人気ない…」
「私教師じゃないし生徒とか関係ないもーん」
「いい歳して何がもんですか」
「相澤くんひどーい!思ってたとしてもそれ本人を前に言っちゃダメだよ!」
「思った時点で貴方に隠してたって意味ないでしょう」


心を読む個性の白に隠し事をしても無駄ということは分かっているので、相澤は容赦なく思ったことは全て口にしている。心を読まれることが大嫌いなのだ。


「というかお昼休みになったのにオールマイト戻ってこないんだけど!」
「そういえば…前は確かお弁当持って緑谷くんの所に行ってましたよ」
「ああそれな。俺も見たことあるわ」
「また緑谷くんなの!?」


ミッドナイトとプレゼントマイクの口から出た、緑谷の名前。最近毎日のように聞く名前にむーっと頬を膨らませる。
そこへやっと待ち人であったオールマイトが戻ってきた。けれど白はいつものように元気よく迎えに行かない。


「おや、白くん来てたのかい?」
「……ふんっ」


頬を膨らませたままふいっと顔を背けた白にオールマイトはきょとんとする。そして今職員室にいる3人に視線を向けた。けれどミッドナイトとプレゼントマイクからは苦笑しか返ってこない。相澤に関しては目すら合わすこともなかった。
オールマイトは目を瞬かせ、再び白に視線を向ける。


「白くん、どうかしたのかい?」
「べっつにー!どうもしません!」


明らかに怒っている。白が怒ることなど珍しいからそれは分かる。けれど理由までは分からなかった。オールマイトは眉を下げながら白に近付き、そっと頬を包むように顔を覗き込む。


「白くん、私が何かしてしまったなら言ってくれ。私は君のように心を読むことは出来ないんだ。それに…その、この歳になってもまだ恋愛はなれなくてね。すまないが、女心というものがいまいち掴みきれないんだ…」
「……」


真っ直ぐに目を合わせてくるオールマイトに嘘はないのだろう。実際に読んでしまった心もオールマイトが口にした言葉と同じだった。ただ、心の中では不安も大きかったようだけれど。


「白くん」
「オールマイトが…」
「私が?」


促されるように、白は恐る恐る口を開いた。


「オールマイトが、最近緑谷くんのことばかり構うから…」
「……………え?」
「せっかく私はオールマイトに会いに来てるのに、オールマイトは緑谷くん緑谷くんって全然相手にしてくれないんだもの」
「そ、それはつまり…」
「オールマイトはみんなのオールマイトだけどもう引退したんだから、みんなのオールマイトじゃなくて私の俊典くんになってくれても良いじゃない!」
「!」


突然強くなった言葉に大きく目を見開く。白はオールマイトの手に手を重ねながら続けた。


「本当は昔からオールマイトがモテモテなのも嫌だったよ?だけど、平和の象徴だしモテるのはしょうがないと思って我慢してきたの!だから引退した今は、もう我慢したくないの!!俊典くんはもう私のものなの!!!」
「白、くん…」
「…緑谷くんが特別なのは分かるけど、私にももっと構ってよ…」


心を読まれて、緑谷とオールマイトの関係はとっくにバレてしまった。そもそもワン・フォー・オールの秘密も学生時代に読まれてしまっているが、それを口外したりしないこともちゃんと分かっている。
いつもは本音を読まれるばかりだったけれど、珍しく白の本音が溢れてオールマイトは頬を緩ませた。そして優しく白の背中に手を回す。その細い腕からは想像もつかないほど力強く、痛いほどに。


「オールマイト…?」
「すまなかったよ。君がヤキモチを焼くなんて思わなかったんだ。今までそんなことを考えていたなんて」
「大人気ないって呆れる?」
「そんなことはないさ。私が君を不安にさせたのが悪いんだからね」
「……本当に悪いと思ってる?」
「もちろん」


そう答えて少し身体を離し、お互いに見つめ合う。瞬間に白は再び頬を膨らませた。


「もー!嘘ばっかり!白くん可愛い可愛い可愛いって!全然悪いと思ってないじゃない!」
「そ、そんなことはないさ」
「こんなに可愛い白くんが見れるならヤキモチ焼かれるのも悪くない…って!ほら!悪いと思ってない!」
「いやだって君があんまり可愛いこと言うから…」
「オールマイトのバカバカバカ!」
(ああもう…可愛いなぁ…)
「私怒ってるんだからね!可愛いじゃ許さないんだからね!!もうオールマイトなんか知らない!」


ふいっと顔を逸らせば相手の心も読めなくなるわけで。チラリと様子を伺うようにオールマイトに視線を向ければ、とてもいい笑顔を浮かべていた。そしてやはり読めた心は可愛いで埋め尽くされていて。


「……可愛いしか、ないの?」
「そんなわけないだろう?」


その言葉通り、可愛いの中に別の気持ちも混ざっていることに気が付いた。白はすぐににこりと微笑み、オールマイトに抱き着く。


「それじゃあ今、可愛いより大きくなった気持ちを言葉にしてくれたら許してあげる」
「読めたんだろう?なのにそれだけで良いのかい?」
「それがいいの!ちゃんと言葉にして?」


両手を取り合い、再び見つめ合った。


「…可愛いはもちろんだけど、それ以上に……愛しているよ、白くん」
「ふふっ、私も!誰よりも愛しているからね!俊典くん!」


そして2人はここが職員室だということも忘れ、恋人同士のスキンシップをしようとしたが、ここは学校だとキレた相澤によって未遂に終わる。
けれど、続きはまた、と目を合わせてそう伝えてきたオールマイトに白は満面の笑みを浮かべて頷くのだった。

end
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前に書いたときオールマイトの相手はガンガン攻めてくタイプの子がいいと思ってたけど、同級生とか書いてたよね?子じゃねぇや…だから思い切って言動を超子供にしてみた。(?)
親しい人以外にはちゃんと大人な対応してる…はず…

title:きみのとなりで

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