それぞれの幸せを
「おめでとう」
「は?」
「誕生日」
「あ、うん」
「嬉しくないのか?誕生日」
嬉しいには嬉しいが、あまりにもあっさりと祝われて反応が素っ気なくなってしまった。誕生日といえば、もっとみんなでワイワイ盛り上がってやるものだとばかり思っていたのだから。
「嬉しいけど…まあ、ありがとう」
「追いついたな、俺たちに」
「穂刈くんのが誕生日早いもんねー。私より年上になったときは少し遠くなった気がしたけど、これでまた同い年だね」
「そうだな、同い年だ」
「そして私は荒船くんより年上になったわけだ」
にやりと笑みを浮かべる。とても悪い顔をしているが、いつも以上に活き活きしていて。穂刈はすぐに何をするつもりなのか理解した。
「荒船くんのことからかってくる!犬とか水とか苦手なもので!」
「怒られるぞ、荒船に」
「私の方が年上なんだからそこを武器に戦う」
「武器になれば良いな、それ」
「なるよ!でももし荒船くんに反撃されたら穂刈くん援護よろしく」
「いいのか?援護で」
「村上くんを盾にして影浦くんと私で攻撃するから大丈夫!だから穂刈くんは当真くんと援護射撃ね!」
まだここにいない人物たちも戦闘に参加させられており、小さく笑った。きっとみんな今日くらいは言うことを聞いて遊んでくれるだろう、と。荒船もきっと、本気では怒らないのだろう。
両片想いだと知っている身からすると微笑ましい光景だ。
「とりあえずお祝いの言葉がなかったらウチの犬に襲わせる」
「不穏だな、台詞が」
「…誕生日、知らないかもだけど…荒船くんに祝ってもらえないのはちょっと腹立つから」
すっと頬を染めて視線を逸らしたその表情に、穂刈は優しく笑ってその頭をぽんっと叩く。
「穂刈くん?」
「奢ってやる。今日の夜の祭りで」
「え!」
「プレゼントだ、誕生日の」
「やった!ありがとう穂刈くん!やっぱり穂刈くんは荒船くんとは違うね!」
「当然だろ、それは」
「えへへ、最初にお祝いしてくれたのが穂刈くんで良かったよ!」
「言ってくれるな、嬉しいこと」
ぽんぽん撫でると嬉しそうに目を細めた。
「行くか、荒船の所に」
「うん!そうだね!プレゼント強請りに行こう!」
「どんどん変わってくな、趣旨が」
楽しそうなその表情に苦笑しつつ、荒船の元へと向かう姿を追いかけた。2人きりで祭りに行きたかったが、この分だとみんなで行くことになりそうだ。
「ここからだな、本当の誕生日プレゼントは」
祭りで両片想いの2人を偶然を装って2人きりにする。その作戦は恐らく全員乗ってくれるだろう。
彼女が幸せなら、それが一番幸せだ。幸せそうな表情を見ているのが、自分も幸せだ。
「好きだ」
「え?」
「……祭りが」
「うん!私も好きだよ!」
向けられた笑顔はやはり、自分の好きなものだった。
「誕生日おめでとう、改めて言っておくぞ」
「ありがとう!穂刈くん!」
End
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大切で大好きでお世話になってる方へ送ったBD夢!だから名前変換ないですけどね!
荒船くんBD夢を上げるに当たって繋げてみたらからこっちも上げます!
ただ甘くないし穂刈くん切ないお話でごめんね!!
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