愛されることは幸福ではない、愛することこそ幸福だ

甘くないしオチもない

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「冬島さん冬島さん!何作ってるんですか!新しいトリガーですか!私との連携用ですか!」
「はいはい、危ないから当真のとこにでも行ってろー」


後ろから覗き込んだが、見向きもされずにあしらわれる。春はむーっと頬を膨らませて素直に当真の元へとぼとぼ近付いた。


「当真!冬島さんの扱いが冷たい!」
「そりゃ良かったなー」
「何が!?ちょっとー!雑誌なんか読んでないで構ってよー!」
「はいはい、分かったから隊長のとこにでも行ってろ」
「何にも話聞いてない!アホ!」
「ぐおっ」


寝転んで雑誌を読む当真の腹にどかっと座った。トリオン体ではない当真にはかなりの衝撃になり呻き声を上げている。


「おま…っ、ふざけんな重いっつの…!」
「重いとか!女の子に向かって最っ低!冬島さんはもっとレディの扱い分かってるんだから少しは冬島さん見習ってよ!」
「女の子もレディもどこにいんだよ」
「今当真のお腹の上にいる」
「女の子もレディも普通は野郎の腹に乗らねぇっての」


退けっという意味を込めて春の尻をぽんぽんっと叩いた。すると春は勢いよく立ち上がる。


「ば…!せ、セクハラ…!」
「は?」
「冬島さーーん!当真にセクハラされましたーー!!」


先ほど全く相手にされなかった冬島の元へ戻る。そして後ろから首にがしっとしがみ付いた。


「冬島さん!聞いて下さいよ!当真にセクハラされました!」
「そうかそうか、当真に構ってもらえて良かったなー」
「良くないですー!」
「ちょ、春お前自意識過剰過ぎんだろ。だーれがお前みたいた貧相なやつにセクハラすんだよ」
「そりゃ同感だな」
「は!?2人とも酷い!ぴっちぴちの女子高生捕まえてなんてこと言うんですか!」
「ぴっちぴち?服がか?」
「当真死ね!!!」


半笑いの当真を向いて吠えた。すると、後ろからぽんっと頭に手を乗せられる。


「…?」
「こーら。そういうこと言うんじゃねぇよ」
「だって当真が…」
「当真はお前に構ってもらいたいだけなんだから、お前が大人にならないとダメだろ?」
「……は、はい!大人になります!冬島さんに相応しくなるように大人になります!」


きらきらとした視線で冬島を見上げた。
冬島に構ってもらえることが何よりも嬉しい。もう今日は満足だ。
しかし、今の発言に不満な者が1人。


「ちょっと待ておっさん。オレが春に構ってもらいたいとかあり得ねぇだろ」
「当真は春のこと大好きだからなー」
「私は冬島さんに好きになってほしいです!」
「そうかそうか」
「こんにゃろ…。春に後ろから抱きつかれてこっそりにやにやしてたおっさんに言われたくねぇな」
「おま、て、ててて適当なこと言ってんじゃねぇ!」
「図星じゃねぇかエロおやじ」
「てっめぇ…隊長に向かって何てことを…」


ばちばちと春を挟んで火花を散らす。さてどうしたものかと思案した春だが、開きっぱなしの扉から見えた人影に瞳を輝かせた。


「…!あーずまさーーーん!!」


火花を散らし合う2人を置いて、春は隊室を飛び出して行った。それをぽかんと見つめる。


「春、隊室が騒がしかったが大丈夫なのか?」
「はい!大丈夫です!それより東さん東さん!今お暇ですか!」
「ああ、今は何もないぞ」
「じゃあじゃあ構って下さい!」
「はっはっは、春は相変わらず素直で可愛いな。良いぞ、何して遊ぶか」
「戦術指南が良いです!」
「?そんなので良いのか?」
「はい!」
「なら俺の隊室にでも行くか。久々に徹底的に指導してやろう」
「やったーーー!東さん大好きです!」
「俺も好きだぞ」


そんな会話が隊室の外から聞こえ、冬島と当真は顔を見合わせる。遠くなっていく声に慌てて隊室を飛び出し、春の後を追いかけた。構って構ってな誰にでも懐く大切な隊員を、奪われてしまわないように。


end

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冬島さんお誕生日夢を書くつもりで冬島隊を書きたかったはずなのに、落ちが東さんになりました。突発って怖い。
2人ともお誕生日おめでとうございます!

title:きみのとなりで

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