あの夜の先に-after story-
「やっぱり、こういうことに連れてこられると思った」
「なんだ、不服か?」
「文句はないけど、一言先に言ってほしかったかな。どうするの?私がジーパンとかで来てたら」
「そしたら服買いに行けばいいだろ」
「・・・金持ちの考えは分かんないわ」
そういってクスクスと笑った顔がどこか最愛の彼に似ていた。相変わらず美形兄弟だこと、と目の前に高橋涼介を見て思う。
連れてこられたのは一面夜景が見られるようにガラス張りになっているホテルレストラン。
ご飯といったらこういうところに連れてこられることは分かっていたのでパーティードレスに近い服装できたら、案の定彼は真っ白のスーツを身にまとい、真っ白の少しうるさい車に乗って迎えに来たのだ。
「それにしても久しぶりだね。仕事忙しいんでしょ?」
「今日は非番だったからね。最近オペ続きだったから休みもらってきたんだ」
「そっかぁ・・・大変だね、お医者さんは」
「まぁ好きでなってるからいいのさ。名前こと、最近啓介と連絡取れてるのか?」
「それが全く。忙しいのか週に何回かくらいしか来ないよ。啓介らしいけど」
ウェイターが入れてくれた赤ワインをいただく。上品な酸味が口の中に広がり思わず美味しいとこぼれる。
「そうか。寂しい思いばかりさせて申し訳ない」
「涼介が謝ることじゃないよ。今に始まったことじゃないし」
「そうかも知れないが、いい年して最愛の彼女を放ったらかしにするのは、あまりいただけないな」
「こうやって涼介や他のみんながたまに遊んでくれたら寂しさも紛らわせられるから、こうやって誘ってくれるだけありがたいよ」
「そうならいいんだが・・・・」
「そんな気に病まないで。ほら!せっかくだから温かいうちに食べよ!」
テーブルに運ばれてきた色とりどりに飾り付けがされたフレンチ料理を前に、お腹が鳴った。それを合図かのように「いただきます」と頬張っていく。
美味しすぎて言葉を失くすってこういうことなのか、と実感した。
「何これ、美味しすぎるんだけど」
「ここは俺のオススメだからな」
「さすが涼介はこういうところ詳しいよね」
「まぁ会食とかで使ってりするしな」
「次は私じゃなくて大切な人連れてきなね」
「・・・さぁ、いつになるかな」
そんな他愛ない会話をしながら続々と出されるフレンチコース料理を口にする。
口にするたびに毎回子供のように感動していたら、ふいに涼介が吹いた。
「相変わらず子供みたいな反応をするんだな」
「悪かったわね、子供で」
「いや、そういうところに啓介は惚れたんだろうな」
「な、なによ急に・・・」
「照れたか?」
「照れてません―!」
「はは、そうか」
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