A secret novel place | ナノ
秋から冬へ(11)

 虎徹が自分を眠らせる為に自分との行為を容認していたと知って、全然思い違いだったのだと知った。
そうか、やっぱり許したわけではなく、僕にとって虎徹さんとのセックスがどうしても必要だと彼が認めたからだったのか。
彼はヒーローだから、それでしか救えないと理解したら自分の身体なんかむしろ喜んで投げ出すだろう。
 そうか、最初から同情だったんだな。彼の深い同情を、僕に対する愛情だと僕は誤解してしまったんだろう。
そうして月日が経って、虎徹さんは確かに僕を愛してくれていると思う。だけどその愛は同情から派生したものだった。
謝罪を受け入れてしまったら虎徹さんは自分との関係が愛ではなく同情だと認めてしまう事になる、認めたらすぐにこの関係は終わってしまう。虎徹さん自身が耐えられない、そういうことなんだろう。
 少しでも長く愛していると錯覚していたい、バーナビーの傍に恋人としていたい、居てやりたい、せめてその位自分に拘ってくれているといいな。
そうか僕はずっと、虎徹さんに欲しがって貰いたかったんだ。僕が虎徹さんをどうしようもなく欲しがってるみたいに。
 あの拒否は僕の為だったのか。
そう思うとやるせなかった。

 あれからバーナビーの家に虎徹が泊ると、行為自体はあっさりと終わらせて自分が抱きしめるか虎徹を抱きしめるかでぐっすり眠ることを心掛けた。
虎徹さんが恋人じゃなくなったらすぐに不眠症に戻っちゃうのかな。セックスなしでも眠れるようにならなきゃ、バディでも居られない。それは流石に耐えられそうになかったのでただの友人として近くに居て貰うだけでも眠れるようにならなきゃなあと内心思っていた。
 添い寝に徹すると虎徹は意外な程人間抱き枕の才能を発揮して、バーナビーを速やかに入眠させるのが上達していく。
変な才能だなと思いつつ、バーナビーは眠れることに感謝した。安心感が半端ないのは、虎徹が自分と同じ能力を持っていることの他に、彼なら絶対に自分を守ってくれるという確信があるからだろう。
 思い返してみたら、出会って殆ど直ぐに自分はこのおじさんと恋に落ちてたのかと思う。
信じられない事にブルーローズもかなりなスピードでフォールインラブしてたので、気づく人は気づく魅力があるんだろう。
 虎徹は夜はバーナビーの家に帰宅するが、昼間はちょこちょこと自宅に戻っているようだった。
イワンを自宅に呼んだのはオリエンタルフェアの打ち合わせも兼ねてなんだろうと思っていたが、オリエンタルフェアが開催され、大盛況のうちに終了してもイワンの訪問は終わらなかった。それどころかカリーナとパオリンも一度一緒に虎徹宅に訪れたらしい。その後頻繁になにやらアントニオとやり取りしているのをバーナビーは知っている。何故ならネイサンを含めて三人で飲みに行ったからだ。
 特に自分からは何も言わなかったが、多分この時の飲み会には自分も行きたいと言えば連れて行ってくれたと思う。
ただその日はどうしても抜けられない撮影があったので言わなかっただけだ。
 そうこうしているうちにクリスマスイブになった。
案の定朝から出動要請が連続的に出されたが、どれもが小さなコンビニ強盗や交通違反だったので大事にはならなかった。
出動要請が出て、帰社して、出動要請が出て帰社して、何回か繰り返した後18時にトランスポーターが現場に乗り入れてくると、斎藤が「タイガー、バーナビー! 乗れ! 今日は私達は撤収だ!」と叫んだ。
「えっ、でもこの後夜間も事件があるかも知れないですし?」
 そう言いかけると後ろにいたブルーローズとドラゴンキッドが、「誕生日当日も事件で返上して、タイガーも自社の仕事じゃないオリエンタルフェアで凄く頑張ってたから、今日は半休なのよ! タイガーがどうしても12月24日の夜は休みたいっていうからヒーロー全員で調整したのよ」という。
 なんですって? と振り返ると横にいた虎徹が頬を掻く仕草をしていた。
「ほら、お前アレだろ? 誕生日も仕事でその後に取った休日でも俺らアレしちゃっただろ? 台無しにしたしさ、その埋め合わせで」
「そんなの気にしなくて良かったのに。むしろ謝罪させてください」
「それは駄目」
 変なところに頑なだなあと苦笑しながらそれでもファイヤーエンブレム、スカイハイやロックバイソンまで親指を立ててくるのでありがたく休暇を頂くことにした。
「ヒーローであるうちはクリスマスイブは絶対休めないと思ってました」
 バーナビーがそういうと虎徹も「だろ?」と返す。
そのまま二人はトランスポーターに乗り込んで。
「このまま僕の家に帰ります?」
 幸い着替えはトランスポーターの中だし、着替えてマンション近くのインターまで送って貰おうと提案すると虎徹は首を横に振った。
「? じゃあどこに行くんです?」
「俺んち」
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