Novel | ナノ

Call me 君の名を呼ぶ(8)



5.NC2100.7


 その次の日から、バーナビーの母親探しが始まった。
虎太郎に告白し、家族になってと申し込む為にも、その作業は必要なんだとバーナビーは言う。
この未来のシステムが良く判らないのだが、付き合って欲しいということは結婚が前提なことが当たり前なのだそうだ。
収入に関する点では僕はもうクリアしてますからとさらっと言われて、虎徹はうーむと考え込んでしまった。
「結婚が前提じゃないと申し込めないわけ? なんか堅苦しいなあ」
「結婚が前提っていうより、その人と子供を作ることを前提に? なのかな」
 ひえっと虎徹が飛び上がった。
「だって男同士じゃん、どうやって子供作るのよ」
「僕説明したと思いましたけど・・・」と、バーナビーが怪訝そうに言う。
「だから、同性で子供を作る技術はすでに確立してるんですって。 貴方方の時代ではありえないのかも知れませんが、現在を生きてる人の40%ぐらいは、人工子宮から生まれた人たちです。 精子だけでも卵子だけでも子供は作れるんですよ。 あと借腹制度っていうのもあって、ある程度の保証を得て、子供を産んでくださる女性も存在します。 まあでも相当上流階級の人しか拘らないし、僕は利用しないと思います」
 ついていけねえ、と虎徹は頭を抱えた。
「なんだかさーサッパリ判らないけど、子供に拘りすぎじゃね? 子供別に居なくてもいいんじゃねえの」
「多分それをやると人類が滅ぶからだと思います」
 とんでもないことを言われて、虎徹は目を剥いた。
「え、なんかすげー大袈裟」
「大袈裟じゃありません。 人類は一度滅びかかってるって言いませんでしたっけ。 凄く子供生まれにくいんです。 努力して作ろうとしなきゃ増えないんですよ、僕たち。 なので、好きになった人と家族になろうとしたら、必ず子供を儲けることが義務付けられてるんです。 子供は必須なんですって」
シングルでもある程度の年齢になったら、国から子供を作るように催促されるんだそうだ。
それでも子供を持つことを拒否すると、社会貢献が足りないとみなされて、ペナルティが課されるらしい。
主に多く税金を払う事になる、ってことですね。
バーナビーに淡々と説明され、虎徹は絶句した。
 理解できん。
未来はいいことばかりじゃないのね、などと虎徹は思い、それ以上はこの件に関しては追求しないことにした。

 バーナビーは必死だった。
司法局に問い合わせてデータを公開してもらったが、母親の情報は何故か不明。
ならば、父親の情報から辿れないかと調べてみたが、司法局のデータベース探索には許可が下りず、高校のライブラリーでもバーナビー・ブルックスVのプライベート情報は全く出てこなかった。
それでも地道に聞き込みをしたり、ヒーロー活動の詳細情報から調べたり、バーナビーは諦めなかった。
「僕、父のことも全く知らなかったんですね・・・、結構発見があって面白いです」などと言う。
 さすが、バーナビーの子孫だなーと虎徹は感心する。
バニーも、ウロボロスについて20年以上個人で調べていた。
足で歩き、訪ね歩き。 決して諦めず、粘り強く。
Wと違って、バニーは復讐という暗い情熱を秘めては居たが、そうでなくても粘り強く真相に迫ろうとする意志の強さは、こうやって受け継がれてるんだなあと虎徹は妙に感動した。
 虎徹は触れられてもキーボード操作は出来ないので、もっぱらバーナビーの横に突っ立って検索内容を見るだけだったのだが、ある日あれ、と呟いた。
「お前10月31日生まれなのな」
「それがどうか?」
「でもって、お父さんも10月31日生まれなんだ? バニーもだぞ。 ありえるのかそんなこと」
 ああ、とバーナビーは言った。
「人工子宮での育成なら普通です。 設定出来るので」
 ふーんと言いながら、虎徹は更にあれとなった。
今表示されているのは、一緒に調べている虎太郎のルーツだ。
やはり虎太郎は虎徹の子孫に相違なく、楓の曾孫にあたるらしい。
バーナビーの父親の詳細は全く出てこないのに、虎太郎の方の詳細は普通に出てくる。
目の前に展開した家系図に、虎徹は結構ちゃんと残ってるんだなあと感心した。
自分が記載されているのは当たり前として、小さく横にワイルドタイガーという特秘事項が儲けられていて、アイコンをクリックすると シュテルンビルト第3期ヒーローと表示される。
没年と日付に眉を顰めた。 俺、命日10月31日じゃん。 
バーナビーに自分の死を誕生日プレゼントでくれてやったって事になる訳だ。 ずどんと落ち込んだ。
しかし、それはおいといて、虎徹は頭を捻った。
楓の曾孫ってことは、虎太郎は俺の玄孫じゃないか。
俺、楓、孫、曾孫、玄孫って、俺の方は5世代になってるのに、バーナビーはバニーJr、バニーV、バニーWってなんかおかしくないか?
 それも聞いてみると、バーナビーは、「ああ」という。
「人工子宮での育成なら、結構間を空けるかもしれませんね。 虎太郎のところは人工子宮出生じゃないんだと思います。 男女の結婚なら大抵は出産を女性は望みますし」
「え、てことはお前の父親の相手って」
 虎徹は「・・・・・・」と言葉を飲み込んだ。
バーナビーは肩を竦めた。
「そうですね、男性なのかも知れません。 ああだとすると、僕にはお父さんが二人居るって事になるのか。 ああ、なるほど、そうか」
 そうなのかも知れません。 男性同士だったから、逆に結婚っていう状態になれなかったのかも。
同性同士で子供を作る場合は大抵人工子宮になるんで、シングル登録が多いんです。 ああ、そうですね、うん。と動じてない。
そこは動じて欲しいなと、虎徹は思った。




[ 60/282 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
【Novel List TOP】
Site Top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -