Call me 君の名を呼ぶ(6) 4.NC2100.6 ドアを通り抜けて虎徹は少年を探し回る。 よし、見つけた。 そのまま暫く歩いてつけて、少年がバス停に向かうので、バスはヤバイ等と思ったが、バス停は通過してそのままシュテルンビルトの軌道エレベーターシャフトへと向かったので少し安堵した。 色々試した結果、何故かエレベーターやエスカレーターには乗れるのだ。 単に動くもの、というのではなく、動きが限定されてるものも大丈夫、らしい。 てことは、モノレールも乗れるのかなと考える。 明日あたり試してみよう。 少年はシルバーステージ在住のようだった。 背中を丸めてなにやらぶつぶつ文句を言って歩いてる様は、年の頃15ぐらいなのに妙に爺臭い。 やがて少年の家についたらしいが、そこはシュテルンビルトにある日本人街の一角だった。 ジャパニーズエリアが存在してる。 ってことは、彼は日本人? なんだか懐かしい街並み。 シュテルンビルトではちょっと浮いてる気がするが、そうか、シュテルンビルトにジャパニーズエリアが出来たのか。 自分が生きていた時代には無かったんだけど、ふーん等と思う。 硬質的なビル群ではなく、少し温かみのある、木を用いた家がそこここに見受けられた。 木を模したセラミックなのかも知れないが、なるほどねーと観光気分で眺めてしまう。 その中の一角、外見上二世帯住宅に似たところへと少年は入っていった。 虎徹はその家の前に立ち、少年が右側のドアをあけて家の中に入ったのを確認すると、その扉に掲げられている表札を見た。 「ふーん、 KABURAGI・・・ んっ?」 がばっと飛びついて、もう一度名前を見る。 小さく下の方に、漢字が彫られてる。 鏑木。 「ちょ、待てよ、おい」 だって、そんな。 虎徹は額を右手でぐっと強く掴むと、首を振る。 だって、そんな。 こんな馬鹿な。 まさか、そんなこれは、えーと、・・・・・・俺の子孫?! 慌ててあたりを見回し、辺りを覗き込む。 そして、虎徹はふと自分の脳裏に浮かんだ疑問に、戦慄した。 ひょっとして、この世界、所謂「生まれ変わり」ってやつなのか? バーナビー・ブルックスWは、もしかしたら、バニーの生まれ変わりで魂が一緒とかっていうヤツじゃないだろうな。 そして、この時代には、俺、・・・・・・俺が生まれ変わってあの少年になってる、というのだったらどうしよう! え、ナニ、何か混乱してきたぞ。 バーナビーが失恋したのって、まさか、俺、っていうかこの子のことじゃあるまいな。 つーか、失恋、失恋って・・・、どゆこと? その疑問に応えるかのように、部屋の中から声が響いてきた。 「どうしたの? コタロウ? 仲直りできたの?」 「仲直りとかじゃなくてさー、俺なんも悪い事してねーのに、なんでだろ」 「そうなのかなあ、気づかない内になにかしちゃったんじゃないの?」 「ねーよ、そんなのー」 窓際から覗き込んで、虎徹は悲鳴を上げそうになった。 友恵・・・! まさかそんな。 そこに居たのは、優しい眼差しを持つ、美しい友恵そっくりの女性だった。 彼女は少し困ったように、コタロウと呼ばれた少年の顔を覗き込み、躊躇無く覗き込まれたコタロウは彼女にキスをした。 「なあさー、今日は泊まってってくれるんだろ?」 「そうね、いいわよ。 でもコタロウ、貴方学校に行きなさいよ? 明日はちゃんと行って」 「行くよ、行く。 ねえ、ともえ、俺と暮らしてくれよ。 俺寂しいんだ」 ともえ! 名前もともえ・・・、ああ、神様。 虎徹はずるずると窓の外、その場に蹲り頭を抱える。 どういうことだ、これは。 まさか全員転生してるとか? そういうことなのか? となると、なに? 俺ってナニ? 幽霊っていうよりなにかまかり間違って残っちゃった思念とか願望とかそんなようなもんなの? 実際の俺は転生して、また過去生と同じ事繰り返してるとか? バーナビーは俺を見つけて、しかもかなり早く出会ってたのに、俺がもう、ともえと出来ちゃってたって事? ああもう、俺ナニがなんだかわかんねえ! 混乱する頭で、虎徹はなんとか立ち上がった。 今日はとりあえずバーナビーんとこに帰ろう。 でもって、アイツに聞いてみよう、コタロウがなんなのか、でもって、トモエがなんなのか。 [mokuji] [しおりを挟む] Site Top |