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最強!オリエンタル商店街(7)



 一方、うわああん、と友恵を追いかけて走り去っていたその後姿に、商店街の面々は全員ふき出す寸前だったが、耐えた。
必死に耐えた。
 鼻腔に空気を目一杯吸い込んでしまっていた魚屋の安さんは、「ふくすゅう〜」という変な音を立てて息をなんとか笑わずに吐き出す事に成功し、買い物に訪れていた法さんは目を伏せながら肩を小刻みに震わせている。 本さんも両手をぐっと握り締めて、咳き込みながら息を吐き出したあと、誰にともなく親指をぐっと突き出してみせた。
 虎坊が面白すぎる。
駄目だ、いつか絶対虎坊にばれる、このまま騙しおおせる気がしない。
 駄菓子屋の京さんも、空を見上げて、何度か小さく深呼吸を繰り返したあと、通りに居る商店街の面々に、「危なかった、今のは危なかった・・・、危うくワープしそうになったわ」と告白し、一同、ぶーっとついにふきだしてしまった。
「厳しいわ〜」
「あー参った、今日のは久々にキたわ。 不意打ちでああいうのは厳しいな」
「俺はもう、次会ったら駄目かもしれん」
 安さんが、真顔で言った。
「今更のように、村上先生の偉大さがわかるね。 あの人はなんていうかこう表情にあんまりでなくて。 俺だったら虎坊診るたびにカウンセリングで笑っちまってただろうよ」
「ヒデエな、安さん」
「あらでも、村上先生も自治会出てたとき、虎徹君は面白いねって笑ってたことがありましたよ」
 法さんがそう言うので、本さんもああ、そういえば、と言った。
「村上先生はいつも柔和に笑ってなさった人だったけど、虎坊に関しては結構心痛めてたみたいだしな。 ほら学校で総スカン食ったあの事件んときも、虎坊だけじゃなくて小学校まで出向いて他の子のカウンセリングもやってたじゃないか」
「まあ、それでも、虎坊のあれは確かに危険過ぎたよ。 誰だっけ、一人脱臼した子が居たじゃない」
「手を繋いでた一瞬で発動したってやつだろ? でも虎坊なにげにあの一回だけだよな? 人間に危害加えたのって」
「違う、あの後、学校から追い出されたのよ。 虎坊も丁度夏休みだからってそのまま登校拒否になっちゃったじゃないの」
「実際でも能力出てたのはその数ヶ月ぐらい前だったんだろ? 良く頑張ったよなあ」
「なんだかしんみりしちまったよ」
 京さんが肩を竦めた。
「まあなんにしても、ライセンス試験まであと残すは一週間。 それまでは絶対バレたら駄目だからね。 虎坊が幾ら鈍いったって、さすがにそろそろおかしいと思ってるんじゃないかと私は思うんだから。 本さん」
「はいよー」
「どうなのよ、調子は」
「駄目かも知れん」
 えっ、とその場に居た全員が硬直する。
本は、ため息をつきながら、すまないと頭を下げた。
「頑張ったんだが、虎坊のもの覚えが、思った以上にまずい。 あと、夢の選び方を間違えてしまった。 虎坊に良かれと思って、な、レジェンドにしたんだけども、その・・・、俺はレジェンドを知らないんだよ。 実際会った事がない。 なのでその、偽物の上に、なんていうか、化け物の類だと思ってる節があると思う。 手を変えて色々やってみたんだが、どうしても頭に入らないんだよ、あの子は」
 虎坊がN.E.X.T.だっていうのも関係してるのかも知れないと、本はうな垂れつつ言った。
「サキさんに、シュテルンビルトまで行ってもらうしかないってことかい?」
「いや、それは避けたい。 なので、俺が今考えてることがあるんだが、サキさんを、夢の中に引き入れられないだろうか。やったことないけど」
「え、それはどういうこと・・・」
「サキさんと俺が契約する。 で、サキさんと虎坊を夢の中で接続できないかと思ってるんだ。 夢に、物理的距離はねえんだよ」
「ってことは」
「シュテルンビルトに行かずとも、自宅で寝てもらっていればその、虎坊の意識にアクセスして、そこからサキさんの能力を発動すればいい。 知識貸し出し型、ってことはつまりサキさんの知識を、そのまま虎坊が使えるてことだろう?」
 だけどな、と本は眉を落とした。
「やったことがない。 俺もサキさんもサイコ系に分類される力だけども、所謂テレパシーってのは殆どないんだ。 能力同時に発動した場合、共有してる俺とサキさんと虎坊にどういう弊害が起こるかも解らん。 何もないかも知れんし、なにか不具合が起こるかもしれんし、・・・・・・正直自信ねぇんだよ」
 虎坊が思った以上にばかだった・・・、というのは商店街の面々に、少なからずの衝撃を与えた。
かといって、諦めるわけには行かない。
 そう、決戦は金曜日。





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