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運命の青いNEXT(11)



 一方バーナビーの方もぐるぐると世界が回るような恐ろしい眩暈に襲われた後、がくんと膝をついて頭を押さえた。
「だ、大丈夫? ブルーローズ!」
 誰か呼ばないと!?
慌ててイワンが「ブルーローズさんが!」と叫んでいるのが聞こえる。
 ぐらぐらするけれど今はもう大分収まってきた。そして自分の動悸も動揺も。
ああ、大丈夫ですよ、ブルーローズさんは。むしろ僕が限界だ――――。そこまで思考してふと自分の腕に触れる感触がある。なんだ、自分の身体に戻ったのかと思って手先の違和感にじっと手を見た。
 視界が非常にクリアだ。
そうバーナビーは精神の小窓から外界を覗くようにしていたが、自分はとても目が悪いけれどブルーローズは目がいいんだなあと思っていた。
精神世界の事だから多少違いはあるのかも知れないけれど、眼鏡なしで観ているカリーナの世界はくっきりと鮮やかでなんだか羨ましかった。真面目にレーシックを検討してみようかと思って、やっと「はて?」と思った。
 自分を覗き込んでくるパオリンを見上げる。
「ブルーローズ、大丈夫? 医務室行く?」
 おろおろとそうして自分の左手に触れるパオリンの右手。すっぽりと収まるぐらいパオリンの手が大きいと思った。いや違う、まさかこれは!
「な、なんで僕ッ――」
「ボク?」
 パオリンが首を傾げる。
ボクの口癖うつっちゃった? と屈託無く聞くその顔がとても間近で、薄緑に着色されたその髪の毛の生え際が艶やかな黒で、ああこの子は虎徹さんと同じ綺麗な黒髪が本当なんだなあ、勿体無いなあとなんとなく思った。
「ドラゴンキッド」
 呟くと、ああ良かった意識は失ってないんだね。調子悪いようならホント無理してトレーニングなんかしちゃ駄目だよと彼女は言った。
「あ、あの・・・」
「大丈夫? やっぱり顔色悪いよ。折紙! ブルーローズ大丈夫そうだけど、ちょっと医務室行ってくるね」
 トレーニングルームから談話室の方まで駆けて行っておろおろしていたイワンがほっとしたような顔になって戻ってくる。
「大丈夫ですか?」とおずおず聞かれて、カリーナ――の身体にすっぽりと収まったバーナビーはこくりと頷く。するとパオリンが思いもよらぬ力強さで腕を掴んで立ち上がらせると、そのまま廊下に出た。
イワンが僕もついていきましょうか?と言うとパオリンが左手でそれを制し、二人でそのまま歩き出す。暫く廊下を無言で歩いてからパオリンが不意にこういった。
「ブルーローズさ、女の子の日は無理しない方がいいよ」
「女の子の日?」
 きょとんと聞き返すとパオリンが眉間に皺を寄せて「生理日だよ」という。
「整理日?」と言い返して バーナビーは口から心臓が飛び出る程動揺した。
「ままままままさかそんな」
「違うの? 単に貧血なの? だったら余計大人しく寝てた方がいいよ。あとタイガーに連絡してね。ホントに心配してたんだよ?」
 うおおおおおと脳内で大パニックに陥っていたバーナビーはその言葉を耳から耳へ素通りさせてしまっていたが、そのままパオリンに医務室に連れて行かれ無理矢理寝かされた後にじわじわと頭の中に今の状況が理解出来てきた。
 カリーナと恐らく意識が完全にチェンジしてしまったのだ!
パオリンがお大事にといって医務室から出て行って一人になると、バーナビーは自分の身体を自分で抱きしめて「うひゃあ」と言った。
その後恐る恐る自分のTシャツを摘んで胸を覗いて「ああ・・・・・・」と呻いた。もしこの時のバーナビーの考えている事がカリーナに解っていたら、即刻凍死させられていただろう。しかし、完全にチェンジしてしまうと互いの考えや思考は遠く、無理をしなければ解らないようだ。
そしてカリーナはカリーナでバーナビーの身体に同じようにパニックを起こしているらしい。そりゃそうだよなと思って二人でシンクロした。
 トイレとか風呂とかどうしよう!



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