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運命の青いNEXT(6)


THREAD.2

「目が覚めたかバニー」
 ふと天井を見上げている。
ここは何処だろうとバーナビーは思った。
「大丈夫か? バニー俺がわかる?」
「虎徹さん、僕・・・」
「ああ、急に起き上がるな」
 バーナビーをベッドに優しく押し戻して虎徹は言った。
「お前どのぐらい覚えてる?」
「虎徹さんを庇ってNEXTにやられました」
「うん、ごめん」
 虎徹がそうじゃなくてと頭を掻く。
「具合悪くないか? 実はさっきブルーローズの目が覚めたって聞いて様子を見に行ったんだけど、また意識を失っちまったんだ。なんの能力だか判らねぇし、今日は大事を取って二人とも入院しろって」
「ブルーローズさんが・・・」
 ああとバーナビーは言った。
「一緒に前に割り込んじゃいましたしね。また意識を失って――」
 うん。
虎徹は頷き立ち上がった。
「虎徹さん」
 何? と虎徹が振り返る。
その笑顔にバーナビーはいえ、と口篭った。
一晩入院。 そう聞いてバーナビーは寂しいと思ったのだ。帰らないで傍に居て欲しいと願うのはおかしいだろうか。おかしいだろう。カリーナもそう思っていたじゃないか。疑惑の二人――彼女はそう少なくとも僕を見ていたと思ってあれ?と首を傾げた。
あのNEXTの力、なんだか詳細は判らないが、一つだけ憶えている。
僕は先ほどまで、カリーナの心の中に居たのだ。 だとすると。
「どうした、バニー」
「いえ、あの・・・」
「ちょっとナースセンターにいって、簡易ベッド借りられないか聞いてくる」
「えっ」
 バーナビーは虎徹を見て絶句してしまう。
口に出して言っただろうか? いや――違う、虎徹はそう多分、――。
「俺のせいでこんなことになったんだ。今日は傍に居るよ。いや居させてくれ」
「ブルーローズさんの方は――」
「あちらは親御さんがついてるから大丈夫だろう。大体こんなおじさん病室に入れるの嫌だろうし。向こうの親御さんだって許さないよ」
 そうですね・・・。
バーナビーは曖昧に頷いた。



 次の日の朝、二人は特に異常が見つからず退院することになった。
虎徹は再びカリーナの母であるクリスティーナに挨拶に行き、同じように捕まっていた。
「まあまあ、昨日に引き続き挨拶だなんて、すみません」
 そういいながら凄く嬉しそうにクリスティーナは虎徹にサイン帳を渡し、出来ればバーナビーさんにも一筆と押し付けていた。
「やめてよママ」
 ハンサム・・・じゃなくてバーナビーの分なら私が後から貰ってくるわよ。ていうかータイガーの分だって私が貰ってあげるわよ。
「あらーこういうのはね、本人を前にして書いて貰うのが醍醐味なのよ。 よかったら写真もご一緒に」
「いやあ、はは・・・。 その俺はバニーと違ってそういうの慣れてませんので」
「まああ、やっぱりバニーとお呼びになるのね! テレビと一緒だわ」
「ママ」
 カリーナはクリスティーナの脇腹をつつく。正直こういうのはやめて欲しかった。
だってこんなの子供みたいじゃないの!
それから虎徹はまたカリーナに「ごめんな」と謝った。
「あのさ、今度から俺を庇う・・・、なんてことやめてくれよ」
 どき。
謝りながら言われたその言葉にカリーナは妙に傷ついてしまう。
何故なら庇われたのが迷惑、という風に聴こえたからだ。

――女の子に庇われた上に、こんな風に恩に着せられたらたまらないって虎徹さん思ってるかもしれないですしね。

カリーナはぴくっと肩を反応させ、その仕草は些細なことなのに不自然だったのか虎徹が眉を顰めた。
「その、な、ブルーローズ」
「虎徹君!」
 廊下をばたばたと走ってくる音がしてロイズが現れた。
カリーナはロイズと面識がなかったが、取材や撮影にバーナビーに寄り添っているのを何度か見ていて彼がアポロンメディアの重役だということを知っている。
ヒーロー事業部総括でもあるんだっけと思い出しながらロイズを眺めていると、彼は虎徹に向かって困ったように言った。
「さっき支度をして帰ろうとしたところで、またバーナビー君の意識がなくなって」
「なんだって?」
 虎徹がおろおろとロイズを見て、カリーナを見た。
「すみません、お暇します。ホントにすいませんでしたっ」
 まあまあと頬に手を当てて大丈夫なのかしらとクリスティーナが呟き、ロイズと虎徹の後姿をカリーナは無表情に見送る。

 ムカつく、ハンサム。

「何か言った?」
「いいえ、何も言ってないわママ」
 カリーナは尚も廊下の向こうを睨みつけていたが無言で踵を返す。
どうしたのかしらねと急に不機嫌になった娘の横顔を見つつ、クリスティーナも病院を去るべく受付へと歩き出した。



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