空が泣いている。
珍しく真面目に聞いていた今日の国語の授業で、先生が擬人法の例だよって説明してた。まるで人の動作みたいに言う表現。じゃあ泣いてるとしたら、なんでなんだろう。何のために、何を思って空は涙を流すんだ。
重たい灰色の空から雨がざあざあと降り込める。今朝は曇っているだけだったけど、5時間目のあたりから降り始めて止む気配はない。傘立てから自分の傘を引っこ抜いて、開く。

「遊馬、なぜ空から水が降るのだ」

雨だよそんなこともわかんねえのかよ、そんなふうに返したら、アストラルはさらに首を傾げていた。それで、雨って言葉がわかんないんだって思い至る。

「雨ってのは、空が曇って水が降ることだよ」

 そういえばアストラルが現れてから雨の日は初めてだ。雨の日なんてそう珍しいことじゃないのに、どうにも今日は新鮮な気分になる。
 
「そうか…不思議だな。その水はどこから来る」
「えーと…わかんねぇ」

 雲から滴る雨の源なんて関心を向けたことなどなかった。実際、どうでもよかったんだ。晴れの日の方が好きだから。

「不思議なものだな、遊馬。こうして空から液体が降り注いでも、誰も見向きもしない。」

 雨は止む気配がない。色とりどりの傘が昇降口で立ち止まる俺達を追い抜かして灰色の景色の中を去っていく。

「…帰ろうぜ、アストラル」

 一方踏み出すと、重さを持って落ちて来る雨が傘を叩く。足元に水が跳ねて制服の裾を濡らすのが鬱陶しくて、自然と早足になった。それから、少し寒い。
 いつもは人の多い交差点も、今日は疎らに人影が見える程度で、そのかわりに車は絶え間無く走っている。走って帰る気は起きなくて、丁度変わった信号の赤に仕方なく立ち止まる。始終、俺もアストラルも何となく無言だった。
 昨日寝そべった河原には少し増えた川の水が轟々と流れていた。思わず足を止める。入っていったら間違いなく押し流されてしまいそうな速い流れがざあざあと音を立てている。




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