文|log くだらない話(仙蔵と綾部) 「あくまで白を切るつもりか、喜八郎」 作り物めいた穏やかな呼び掛けに、喜八郎は俯いたまま動かない。肯定も否定もせずただ黙り込む姿を眺めながら、仙蔵はふっと笑った 白い指がゆるゆると綾部の髪を弄る。前髪をかき上げた先では茫洋とした瞳が真っ直ぐに仙蔵の切れ長の目を見上げていた。交錯する視線ににやりと口の端を吊り上げ、仙蔵はぱっと髪を解放する。 「まあいい」 あくまで黙り通すつもりらしい固く結ばれた唇を眺めながら、仙蔵は心の中で状況を反芻する。ことが起こった時点で作法室にいたのは綾部一人。他の三人はそれぞれの実習で学園にいない。そして、黙っているということ自体が既に答えだ。 間違いないのになぜ正直に白状しないのだ。仙蔵は再度問う。 「…私のプリンを食べたのはお前だな?」 |