文|log ビタースイーツ(丕趙/バレンタインデー) ※現代設定 「菓子はあまり甘くない物が好きだ」 と、突然言われて面食らった。何かあったかと考えて、明日がバレンタインデーだということに思い当たった。 「…それは、貴方にチョコレートを渡せということか?」 と返せば、何を野暮なことを、と逆に驚いた顔をされた。 どうやら彼の中で、私がチョコレートを贈ることは確定事項らしい。 それから、明日は空けておけ、と、半ば強制的に会う予定を入れられた。 こうして選択肢は一つに絞られ、私は奇異の視線に耐えつつチョコレートを買いに行くはめになってしまった。 翌日、世間はバレンタインデーで盛り上がっている頃だろう。 有給を取った私は、朝から曹丕の家に来ていた。 曹丕に買ってきたチョコレートを手渡すと、微妙に不満そうな顔をした。 「…まあ、いいだろう」 なにがだ。 私が選んだのはそれなりに高価で有名なブランドのチョコレートで、申し分は無いはずなのだが。 曹丕は包みをさっさと開けると、一粒口にほうり込んだ。 顔が微かに緩んだ。どうやらお気に召したようだ。 曹丕の手が箱に伸び、もう一粒を手に取る。 私は嚥下する喉元をぼーっと見つめていた。 突然ぐいと腕を引かれた。 「うわっ」 引き寄せられ、曹丕の胸の中に倒れ込む。 思わず曹丕の顔を見た途端、口付けられた。 口の中に広がる、ほろ苦さの混じる甘さ。 放心する私の視界がいつのまにか天井を映していた。 曹丕が覆いかぶさるように私を押さえ付けている。 「お前が欲しい」 「なっ…」 抗議に似た短い声を無視し、曹丕はふっと余裕たっぷりに笑った。 最初からこういうつもりだったことは明白だ。 私は抵抗を諦め、下りてくる唇を甘受した。 ××× 2009年バレンタインフリー文。 補足しておくと、チョコレートを貰った曹丕が少し不満そうなのは、手作りを期待していたため。贅沢な…! それから、回りくどいぞ、曹丕。 |