おじいちゃんの体が早くよくなりますように。 里のみんなが無事で過ごせますように。 くちなわが早く帰ってきますように。 次期頭領として皆に認めてもらえますように。 和平の使者の仕事がうまくいきますように。 統合された世界が良い方向に向かいますように。 みんな、元気でいられますように。 …それから――。 「なあなあ、願い事何にしたよ?」 ゼロスが肘でつつく。溜息が漏れ出た。 「ああもう、うっとおしいねえ」 祈りながら頬を膨らませたしいなに、ゼロスがニヤニヤとからかう。 「おまえ、願い事多いんだよ」 「願い事が多いのは悪いことではあるまい」 ゼロスはしいなを挟んだ向こうに立つ人物を睨む。 「うるせーよ。なんでおまえがいやがるんだ」 「次期頭領を補佐するのが俺の役目だからな」 「プライベートまでくっついてんじゃねーよ」 「公私は関係あるまい」 「邪魔だ。せっかくのデートが台なしだ」 「ほう、しいなはそうは捉えてないと思うが?」 まだ祈ったままのしいなの肩がわなわなと震え出す。 「ゼロスもおろちもうるさいんだよっ!」 きっと睨まれて、ゼロスは明後日の方向を見、おろちは「すまん」と俯く。 「だいたいね、勝手について来たのはあんただろ! 初詣は毎年おろちとくちなわと一緒に来てたんだよ! そりゃ、今年はくちなわはいないけどさ…。だいたい、あたしはデートだなんて思っちゃいないからね!!」 うっと詰まってゼロスは黙り込んだ。 「おろちも、こんなバカいちいち相手にしなくていいよ!」 「それはちょっと酷くねーか?」 口を挟む男を再び睨み、黙らせる。 「あんたはマーテル教会のほうに初詣に行くべきだろ! なんでミズホに来てんのさ」 追及するしいなに、真剣な眼差しをする。 「…おまえに会いに来たに決まってんだろーが」 憤慨していた少女の動きがピタッと止まった。 「おまえがちっとも会いに来てくんねーから、俺さまから来たんだよ」 「しいなは今忙しいのだ。その一端はゼロス殿のせいでもあろう」 今度はおろちが口を挟んだ。 統合された世界で、テセアラからシルヴァラントへ送る和平の使者にしいなを推薦したのは、まごうことなくゼロスである。責任ある重大な役割だ。 「おろち、その話を承けたのはあたしだよ。ゼロスが悪いわけじゃない」 しいなは口調を強くした。幼なじみとしてではなく、次期頭領の言葉であった。 |