先に下に降りた彼の手に、あたしは手を重ねる。あたしも19になったから頭を撫でられることは少なくなったけれど、女の子扱いは相変わらずだった。
「あっ」
 踏み外す。ゼロスは慌ててあたしの体を抱き留めた。
「…相変わらずドジだな」
「あ、あはは…、ごめん」
「メルトキオの街中に不時着したのも、どうせおまえの仕業だろ」
「う、うるさい」
「ま、俺さま的には役得だけどな。ハニー?」
「!!」
 抱き留めた体勢からゼロスは抱きしめてきた。
「アホ神子!」
 殴るのが難しいので髪の毛を引っ張る。
「いててててて!」
 出会った頃からみれば、随分ゼロスの扱いにも慣れた。
「あ〜あ、俺さまの麗しいキューティクルが…」
「ホント、油断なんないんだから」
 肩をいからせて歩くあたしを、ゼロスはいつものように「待ってくれよ、ハニー」と追いかけてくる。



 初めて等身大のあたしで接することが出来た男がゼロスだった。それでも、あたしたちの間にあるものは愛じゃない。
 ロイドを想ったときに感じる胸の高鳴りや、コリンと共にいるときの安心感とは、またちょっと違う。一番近いのは友情…でも違う。互いに友人だなんて思っていない。
 愛に近い情を感じるときもあれば、友情のような連帯感を感じるときもあり、また憎しみに似た怒りを感じることもある。
 あたしたちは、長い付き合いの中に、しっくりくる表現をみつけた。
 それが、腐れ縁だった。



 To be continued...

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