しいなが身を乗り出した。
「好みかい?」
 くすり、と笑う。
「そうね、条件だけ見ればそうかも知れないわ。でも、気持ちっていうのは条件だけでは決まらないものでしょ?」
「確かにそうですが、逆に条件では全く好みでない人でも、もしかしたら好きになってしまうということですよね」
「そうね。でもゼロスはないわ。まだロイドやリーガルのほうが可能性はあるかしら」
 年齢が一番近いというのに、冗談めかしてもきっぱりと否定されるゼロスに、しいなは心の中で合掌する。それから話題を変えた。
「弟だからって割愛されちゃったけどさ、ジーニアスは割と女の子にもてるタイプだよね」
 ベッドにうつぶせになり、頬杖をつく。リフィルは「そう?」と返した。
「そだね、料理はうまいし、頭もいいし」
「姉にリフィルみたいな美人がいるなら、容姿だって期待できるんじゃないかい?」
「ふふ、ありがと。ジーニアスのことも褒めてくれて嬉しいわ」
 自分のことよりも、弟が褒められたことのほうが嬉しいようだ。リフィルは本当に嬉しそうに笑った。
「プレセアはどう思う?」
「私…ですか?」
 ジーニアスの気持ちは、プレセア以外の全員が知るところにある。まだ幼い恋心ではあるけれど、お膳立てをしたくなってしまうものだ。
「そうですね、確かに魅力的だと思います」
 心でなく、頭で冷静に判断した答えだとしても、上出来ではないだろうか?
「そう考えてみると、皆さんとても魅力的ですね。ジーニアスも、ロイドさんも、ゼロスくんも、リーガルさんも。クラトスさんについては、まだよくわかりませんけど…」
「そうね。順位はつけられる?」
 プレセアの答えははっきりしていた。
「つけられないと思います。皆さん大切な仲間ですから」
 ジーニアスのことを思うと残念な答えだが、致し方ない、とも思える。
「悪かったわね、少し意地悪な質問だったわ」
「いえ」
「でもコレットは順位をつけられるわよね」
 プレセアに謝った次の口で、コレットに意地悪をする。
「え…」
 まばたきをして、コレットは顔を赤くする。
「えっと…、あぅ…」
 しいなは耳まで赤くなったコレットに、少し切ないような、優しい笑みを向けた。
「あんたの先生は意地悪だね。答えが解ってて聞くんだから」
「あら、そんなこと言うとあなたにも同じ質問をするわよ?」
 口でリフィルに敵うわけがない。しいなは黙り込む。
「答えが解ってて、って…しいなも解ってるから言えるんだよね?」
 そういうことである。しいな自身も理解し、リフィルが理解していることを知っているから言えるのである。ということは、リフィルの先程の言葉は、しいながどんな順位をつけるか知っていると言っているも同じなのだ。
「ロイドも、また違ったタイプでもてそうよね。しいなもそう思わない?」
 空々しいリフィルの質問に、しいなは無言のまま軽く睨んだ。もちろん全く堪えていない。
「コレットはライバルがたくさんいて大変ね」
 ふふん、と笑うリフィルに、コレットが布団を被って顔を隠す。意図には気付いていない。
「ううう、先生のいじわる! この話はここで終わりにしてください〜」
 くすくすと笑うリフィル、内心助かったと溜息をつくしいな、実は少し楽しかったプレセア、恥ずかしさで顔を見せられなくなったコレット。第一回目のガールズトークは布団の中から聞こえるコレットの声で幕を降ろした。



つづく


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 W&R用の書き下ろしです。女の子がきゃあきゃあトークしてるのって、可愛いと思うのです。
 確かに姦しいと感じることもありますけどね。
 シンフォニアって、アーチェさんやチェルシーみたいなキャピキャピ(死語)した女の子がいないので、難しいですけど…。
 書いてみたらラブラブ要素皆無で女性陣が勝手に盛り上がってるだけ、という文章が出来ましたまる。


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