ガールズトーク 〜未来の話〜
賑やかな夜になる、という共通の認識がある。
何故かというよりは、それが必然なのだ。一人増えた。それもとびきり明るい少女がだ。
「で、コレットはロイドとうまくいってるんでしょ?」
「えっ」
毎度毎度、ガールズトークを始めるきっかけとなるコレットも、さすがにたじろいでしまっていた。そう、マルタの存在に。
皆で集まるときは、だいたいメルトキオにあるワイルダー邸が多い。広いから、だとか、皆が会しやすいから、だとか、様々な理由により、これもまた必然的にそうなっている。
世界再生の旅が終わってからは8人で、ラタトスク関連の争乱が一段落ついてからは10人で、全員揃ったり揃わなかったり場所が違っていたりはするが、今回は10人全員が集まれた、その女子部屋でガールズトークは幕を開けた。
「あの…、えっと」
一番窓際のベッドの上に正座し、窓から見える月に祈っていたコレットが首を傾げた。隣のベッドに寝転がりながらマルタが発した質問の意味をとらえ損ねたらしい。
「ラブラブなんでしょ? ってこと」
にこにこと笑うマルタに表情が固まる。ドレッサーでプレセアの髪を整えていたしいなも、デスクで読書していたリフィルも、ほぼ同時に苦笑いを浮かべた。
「ら、ラブラブって…」
あわあわと顔を赤く染めるコレットに、マルタも苦笑いしてしまった。
「そんなに慌てなくても。でもまあ、うん、その様子見ただけでよくわかったわ」
「あんたたちもうまくいってんだろ?」
見るに見かねてしいなが助け船を出す。マルタの返事は即答で「もちろん!」だった。
「幸せそうで何よりです」
屈託なく本当に嬉しそうにプレセアが笑う。えへへ、とマルタも笑みを返す。コレット以上に聞く必要がないくらいわかりやすい顔だ。しかしその顔はすぐに素に戻る。
「…で、コレットはまあいいんだけど」
酷い言い種ではあるがマルタに悪びれた様子はない。
「リフィルさんやしいなやプレセアは、そういう話、ないの?」
苦笑い×3。
「なんだってあんたはそういう話が好きだねぇ」
「だって気になるもん!」
未だにリフィルからリーガルへのラブレター疑惑事件を話題に出すマルタのことである。
「リフィルさんみたいに大人ならそういう話のひとつやふたつあってもよさそうだし…。もちろんしいなもだし、プレセアだってあってもおかしくないお年頃じゃない?」
ふふ、とリフィルが笑った。
「まあ、恋人と呼べる人が、過去にいたことは否定しないわよ」
えっ、とマルタとコレットとプレセアが視線を集中させた。しいなはユウマシ湖でユニコーンに会ったあの一件でわかっていたが、いやいや、コレット、あんた理解してなかったのかいと心の中でツッコミを入れてしまった。まあ確かに清らかなる乙女と男女の交際にどういった関連性があるのかは彼女はまだ気付いていないのだろうが、しかし18歳だろ? とも思える。
「今はいないわよ」
リフィルは先手を打った。スタンバイしていたマルタの喉が何も発しないまま唇は閉ざされる。
「私は人生まだまだ長いからね。共に生きるのでも看取るのでも、後悔しない人生のパートナーをゆっくり探すわよ」
意見の余地のない言葉である。マルタは納得しつつも苦笑いで、当然ながら矛先を変えた。
「で、しいなは?」
「……」
はあ、と溜息が漏れる。リフィルと比べられたら重箱の四隅どころか蓋の裏までつつかれそうだということは理解していた。
「しいなは21でしょ? そろそろ結婚、とか考えないの? それともミズホの人たちはそうでもないのかな」
ミズホ的にはもう結婚して子供がいてもおかしくはないし、しいな自身も交際するならばそれを前提に考えるほど身持ちは堅い。しかしそもそも男性とお付き合いしたことがない。問題は、これを説明したら格好の餌食であるということだ。
「さあねえ。まだそんな相手もいないし、考えたこともないからね」
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