Seeking Love | ナノ

03.Mind your business.

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 風月はひらひらと手を振り、自室へと続く階段を下りていった。

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 耕造が自警団から戻ったのはいつもよりも少し早い、まだ夕焼けが見える時間だった。
 扉を叩くと応答があり、入室すると書き物をしていたらしい四葉と視線が合う。
「お帰り」
 嬉しそうに笑いながら言われ、耕造は足が竦んだ。
「なんなの、急に」
「別に。朝、家族だと言っただろう」
「お前、本当におかしいよ?」
 その様子に違和感を覚えて訊くが、四葉は嬉しそうに笑ったままだ。
「ここには慣れたか?」
「まあ……」
「じゃあ、もう、家族でいいだろう」
「うーん? なんか違う……」
「何が?」
「うまく言えないけどさ。お前は俺を愛せないじゃん?」
 夏の都にいたときの昔話だって、この前読んだ物語だって、結ばれるのはいつだって男と女だ。
 だけどそういう問題ではなく、耕造ははっきりと感じるのだ。
 四葉は耕造を見ていないと。
 四葉は困ったような顔をした。
「確かに、愛せない、が……。攫ってきたようなものだし。責任は取る。不都合はあるか?」
「あるよ」
 攫ってきたようなもの、って、攫ったんじゃないか。
 向こうの標的は玲菜で、勝手に入れ替わったのは耕造だけど。
「だって俺はお前のこと、好きだもん」
 うまく形にならない思いは、言葉にした途端、その痛みを主張した。
 ぽかんと口を開けた四葉には申し訳ないが、耕造は自分の抱えているものに納得し、ひとり頷いた。
「耕造。お前は俺が好きなのか」
「うん」
 絞り出すような四葉に躊躇わずに頷く。
「どうして」
「うーん。俺さあ、帰るところないし。それに、自警団の様子聞いてたら、玲菜を追いかけることもしてないってわかる。だったら俺ってお役御免じゃん? 人質にもならないしさあ。で、ここって、お前に言っていいかわかんないけど、あの冬の都じゃん。なのにお前は俺に優しいし。だけど、それは家族っていうより、なんか……。許してって言ってるみたい」


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