お昼休みに、夕七ちゃんとリップクリームについて語ってました。
「乙女の必需品よねえ。」
「必需品…ですか。」
「そうよこえり!キスのとき、がっさがさだったらどうするの。」
キスのとき…
き、き、キスの…
ぶはあっ、まずいです!
リフレインはよろしくないです!
「こえり…鼻血でてるけど。」
「えっ、またですか!」
「また?」
大変です。
うっかりうかうかのぼせてしまいました。
鼻をおさえながら、なんでもないですよーとか誤魔化してみましょう。
き、キス、とか、耳がセイカンタイとか!
最近、めくるめく大人の階段を無駄に上りつつあったりするのですが、いかんせん、相変わらずなえらいこっちゃです。
ああ、すみません。
もうなにもかもが、全くもってまとまりません。
お陰さまで、大好物なロールキャベツさえのどを通らないですよ。
…がっさがさ?
「…夕七ちゃん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「どうしたの?」
「あの、その、き、き、キスのとき…がっさがさだと…具体的にどう…?」
ぐぐっと前のめりなわたしにたじろぐことなく、うーんと考える夕七ちゃん。
流石です。
お友達をながくやってるだけありますね!
「ひくんじゃない?」
けろっと、夕七ちゃんがそう言いました。
…ひく?
…ひく?
ひいちゃったりなんかしちゃったりしちゃうんですか?
「…がーん です。」
「何そのリアクション、古いわね。」
わたしのフォークにささったままだったロールキャベツをぱくっと食べて、夕七ちゃんが首をひねってます。
それから。
「…はっはーん…。」
にやりとしたかと思うと、大きな声で、
「なーゆきー!」
「わあっ、夕七ちゃん!?」
何としたことでしょうか、誉くんを呼びましたが!
「なーに?」
いつものようにお花をとばした笑顔で、誉くんが駆け寄ってきます。
「こえりとキスしたんでしょ?どうだった?」
な、何を聞いちゃってるんですか!
「うーん…」
考える素振りをみせてから。
満面のにっこにこスマイルで、誉くんは、爆弾発言をしました。
「しっとりしてたよ。ね、みーこ。」
本日、わたし田鍋こえり。
二度目の鼻血をふいたことは、乙女のひみつにさせてください。
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