第2話



暫し私の堅苦しい挨拶と説明が続く。読み飛ばしてくれて構わない。


我が名はブラック・マジシャン。黒魔族のランク8にあたる魔術師であり、武藤遊戯様にお仕えしている“カードの精霊”だ。

カードの精霊というのは、実はどのカードにも宿っている。だが初期頃の魂はごく僅かであり、自らでは表に出られない。
決闘者の熱意がカードと共鳴し合う事により、魂は郭大してゆく。其れが極限まで大きくなると精霊体として出現が可能になるのだ。

“カードと魂を交わす”とは、真の決闘者、我らカードを信じる者でないと滅多に成せないと伝承されてる。

マスターは、どんなに過酷な状況でもカードを信じ抜くお方だ。このような主の元に仕える事が出来て、私は果ら報者だと切に思う。













(マスター。ご連絡が入った様です)

「ありがとう。メールかな?」


人間が使う情報伝達アイテムの『携帯』を渡す。私は現世の物に触れる事が出来ないので魔術を仕様しなければ物は運べない。
現在表側人格のマスターは商品を棚に置き、受け取った物を開いた。

店番をするマスターを手伝うのも、私の日課で毎度励行させていただいている。店番だけとなく日々の活動も随従中だ。敬意を献じ、主が無事で過ごせるよう尽くすのが己の義務である。

(誰からだ?)

闇のマスターが宙を浮遊しながら問う。

「名前ッちゃんからみたい」

名前ッ様…!




………………ああ、いや。とんだ醜態を晒して失礼した。

御察ししている通り、私は名前ッ様という人間に焦がれている。
何故好きになった?
其れは自分でも解明つかなく難しい所だ。何処に惹かれるかと問われれば全てと云え、名前ッ様がどんな性格あっても悪辣でない限り嫌いになどなれない。

それよか、マスターと名前ッ様は文通を交わされて居られるとは。なんと御羨ましい。



物欲しい面をして居るのが目止まったのだろうか、闇のマスターが不気味な笑い声をあげ近寄って来た。

(フフ……ブラマジよ、名前ッに惚れてしまったんだな…)

私と肩を組んで独言する。

(この前会った時、ずっと名前ッの事見詰めてただろ。俺の目は誤魔化せないぜ!)

相変わらず鋭い洞察力をお持ちだ。 そんな闇マスターは呼吸を荒らげ始める。

(人間と魔法使いの禁断の愛か………。萌える、萌えるぞ、夏の新作は決まりだ、はぁはぁ)
「気持ち悪いよもう一人の僕、ブラック・マジシャンが困ってるよ」

本当に表マスターはまともだ。闇マスターも決闘中ではまともであるのに、普段に戻ると残念な内面になってしまう。しかし、敬っている事実は変わらない。

(名前ッがお前の事好きになる、みたいな魔法ないのか?)
(そんな! 私は、名前ッ様の気持ちを踏みにじる真似は行いたくありません)
(え、そ、そうか。思いやりがあるな。流石俺の下部だぜ!)
「主に似なくてよかったね、本当に」

魔法で惚れさせるなんて。そんな道徳に欠ける事は間違ってもしたくない。

「ま、明日は海馬ランド(笑)!楽しみー!ブラック・マジシャンも付いてくるでしょ?」
(差支えなければ、御供致します)
(相棒相棒。メールはなんだったんだ?)
「明日カード持っていった方がいいかな?って来たから、うんって返事しといた。
そしたらねー、今からカード買いにそっち行くよって来たよ」

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