第6話



雨上がりの休日空に積もる雲の狭間から太陽が顔を覗かせ光を地上に射す。もう何度目なるだろう、名前ッ様を誘い街へと出歩くのは。こうしてマスター二人と名前ッ様の御傍に付き同じ景色同じ時期を感取する事に、私はあまたの幸福噛み締めていた。今日はどの様に過ごされるのだろうか。

「そういえば今日新しいブースターパックの発売日だよね!」
「お、ナイス情報だな名前ッ!」
「僕昨日通販でゲーム買おうとしちゃってたよ。お金無くなる所だった〜危ない危ない」
「相棒、俺の分のお金…」

「じゃあカードショップ行こうか名前ッちゃん!ブラック・マジシャン!」

そうして行きつけの店へ向かう。現在は人溢れる時間帯なのか沢山の人が道を行き交っている。その犇めきの中で、私も存知している姿が眼に入った。表のマスターもその人物に気がついたのか、名前を呼びながら駆け寄った。

「獏良くん!」
「……? あ、遊戯くん」

振り向いた銀髪の青年。差し向けられた大きな眼が吃驚した色を伺わせている。

「偶然だね。僕の睡眠不足の所為なのか分からないけど君の姿二つ見えるや。それともドッペルゲンガーか何かい?」
「違うぜ!影分身だ!」
「もう一人の僕に耳を傾けないでいいよ。ていうか寝不足大丈夫?」

表のマスターは原因不明の現象の話すと彼はなんだか興味を惹起させている御様子。「ブラック・マジシャン、彼は??」と小声で尋ねる名前ッ様に、マスターの友好のご友人だと陳じた。

「ん? そっちの子は…」

彼の興味が名前ッ様へと移る。

「名前ッです。初めまして!」
「初めまして。もしかして、遊戯くんの彼女?」
「ご明察。しかしそれはブラマジのー……ドゥフッ」
「この子は前の大会で知り合ったんだ。話がすごい合うからよくショップ巡りに付き添ってもらってる」
「童実野高校の子じゃないよね?」
「うん。私の高校は●×市のー……、 !!」

表情の豊かさが改めて分かる。だが彼女は眼をカッと開いたまま硬直してしまった。

(如何なされました?)
「こ、この人の後ろに不気味な人形の精霊が映ってる…」

口の横に掌を立て彼に憚いながらも呟く。視線を正面に戻すと、名前ッ様の仰る通り彼の背後に不気味な錻の人形が姿を表していた。やつ…否、彼女と云った方が適切だろうか。彼女は特殊な条件で召喚出来る悪魔族のモンスター、ダーク・ネクロフィアだ。


「あんなにホラー寄りなの初めて見た……。いや、悪魔系の精霊すら初めてな気がする。ドラゴンとかより全然怖い……」

やはり名前ッ様も不気味な者を見ると人並みに萎縮なさるのか。無意識であろう身を寄せる行為に、普段と違う雰囲気を感じた。眉を顰めてる彼女を、聊爾ながらも可愛いと思ってしまう。

さて置き、不審な音を立てるもただじっと見つめてくるネクロフィアをどう往なすか。下手な真似をすると、念眼殺されてしまうだろう。

最後まで視線を送られ続けたが、マスター達は簡便な会話をして何事もなく別れた。

が、

(……っ!?)
「ブラック・マジシャン!!?」

何故気がつかなかったのだ。私は名前ッ様の肩を指差すと首を向ける。

「え? うわあ!?」

普段ネクロフィアが抱いている“子”が肩に付いているのだ。カタカタと何かの楽器の如く音を立て、首を震わせていた。

「どうしたの!?」
(名前ッ様にネクロフィアの子供が名前様にとり憑いてしまって)
「あのいつも抱いてる錻の子供か」
「先刻話した時に憑いちゃったみたい…」
「なにそのどうぶつの森で通信した後に出てくる子猫みたいな展開!めんどくさ!!」


マスター達も見えてはいない筈の赤子を見る。


「私が会って直接返さなきゃ駄目か…」
「今引き返せば間に合う筈だよ。行こう!」
(…………)

「なんだブラマジ、不安か?」
(私の記憶ですと、ネクロフィアは闇人格の下部である筈なのですが…)
「過保護だな〜。あんまり面倒見てると良い友人としてしか見られなくなるぜ?」
(構いません。名前ッ様の身の為です)
「献身だな……。まぁ先刻は人畜無害の表の性格。名前ッにも俺達にも危害は加えないはずだ」

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