先程話した道の先、三つ目の曲がり角を曲がる。

「「(!)」」

間に合った所では良い。だが眼先に居る彼は先刻の彼でない。あの逆立った髪………まずい、闇に堕ちている。表は懇意な御仲間の一人だが裏の凶悪な顔を持つ決闘者。 奴と会うと毎回闇のゲームに付き合わされる破目になる、今は時間を開けた方が………―――


「いたいた!獏良くーん!」
(!!お待ち下さい名前ッさ……)

名前ッ様は走って彼の肩を叩いてしまった。振り向くとやはり闇のバクラだ。肩に接触した手の持ち主をぎろりと睨む。

「ああ? 何の用だ小娘」
「?、?? 獏良くんだよね?」
「俺様が先に質問してんだ。何だテメーは」


マスター!迅速に彼を止めてくださ……

振り向くと私の背後には空気しかなかった。少し離れた高層建物の狭間で、マスター二人は垣間見ている。そして、手を合掌させ口動作で「ごめん」と記した。

「何だって、先刻会ってたじゃない。その時憑いたこの子を返しに来たんだけど……」
「! ネクロフィアの餓鬼じゃねーか!」


肩にいた子の精霊はゆっくりと浮遊してネクロフィアの腕に収まる。名前ッ様はその姿を見てほっと息を付いた。

「ところで君、デュエルが本当にすきなんだね」
「は? なに急に妙な事いってやがる」
「モンスターの魂が表に出れるようになってるってことは、そういうことでしょ?」
「………不気味な女だな。他人の精霊まで見えるみてぇだし、死霊より寒気がするぜ…………」


決闘の腕は一流だと殺伐としすぎているのだこの男は……。

「デュエルは、相手を脅かすにゃ最適だからな。恐怖の顔がたまんねー。勝利で快感を得られる」
「そう?私は負けても楽しいよ」
「ケッ 雑魚は揃ってそう囀る」


開けばいけしゃあしゃあと棘を吐き散らす口を閉じたかと思うと今度は何だ…、……彼女を見詰め始めているが。 まさか、名前ッ様に闇のゲームを仕掛けるのでは!?

「…………ま、テメーとはデュエルしてみてぇがとは思うが時間の浪費にしかなんねーだろうな」
「したくなったら声をかけてね」

否、止めて頂きたい。
闇バクラはポケットに手をつっこみ去っていったのを確認して名前ッ様に振り向いた。

(なりません!!あの様に邪な者と決闘しては……!)
「え? どうして?」
「闇のゲームといって、命を懸けるデュエルをするんだ」

何時の間にかマスターが戻ってきていた。

(どうして物陰に隠れて居たのですか…)
「悪い。あのサイドのバクラと会ったら、即闇のゲーム開始になるからさ。困った奴だぜ あのウサ公は」
「闇のゲーム……」
(魂が宿っている者の主であっても、その主が誰しも真っ当とは限らないのです)
「…それって、デュエルを使って酷い事をしてるって事?」
(当たらずと雖も遠からず、という所でしょう……。くれぐれも決闘を行う時は、)
「主人でもない私を想察くれるなんて、貴方は優しいんだね」
(え……)


顔の体温が込上がってゆくのが己でも分かる。それは貴女が気になるからですと正直に云った方が妥当なのか、それとももっと恭しい事を述べた方が良いのか。答えが出ない、私は女性が喜ぶセリフを容易に吐ける男ではないのだから。汗りを抑え咳払い、それだけで精いっぱいにある。


(……勿論マスターの尊いご友人ですので、配慮させて頂くのは正当かと。

ともかく、特殊な力を持たずとも邪な決闘者は存在すると肝に銘じて下さい。不正行為や、公平ではない理不尽な規則を元に決闘を申しこんだり………)

「まぁそうなったとしたら、良きに計らうよ」


心得たのかそれとも受け流したのか。だが明らかに誤魔化し寄りとしてふわりと笑った。その精神の軽さに不安を抱くのは過剰保護なのだろうか? 浮遊している彼女が、いつならず者の手によって叩き落とされてしまうかと思うと、私はぞっとしないのだ。






  

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -