あきらは変な人だった。と、いうか不思議な人だなって思った。雰囲気というか、人を包み込む様な優しさがあって、落ち着いた声のトーンと話し方に引き込まれていくみたいに私は想いを寄せる彼のことを話していった。好きだった、というかまだ好き。どんどん彼のことを話していくうちに、私の涙がまた溢れてきて、あきらは「うん」とか「そうだね」なんて相槌を打ちながら一方的に話す私の話をずっと聞いてくれていた。


















「落ち着いた?」


『...ちょっとは...。それと、ごめんなさい。シラけさせちゃったわね』


「たまにはこんな一晩限りがあったって、いいんじゃない?」


『あきらってやっぱ、変な人だね』


「そう?」




「花子ちゃんは可愛いね」なんて言うもんだから、私は思わず眉を寄せながら『ちゃんって歳でも可愛いって歳でもないわよ』と、口を尖らせた。私の言葉を聞いたあきらがクスクスと笑って、私と目が合うと静かに私の唇に唇を重ねる。ちゅっと鳴ったリップ音が小さく響いて、あきらが私の頬に手を寄せながら指先で私の耳を優しくなぞった。




「今日はこのまま、寝ちゃおうか」


『...え?』


「え?って...何かして欲しいの?」


『だってあきらは、そういう目的で誘ったんでしょ?』


「まぁ...そうだけど、それは今度会った時にでも良いかな」


『今度って...もう二度と会わないかもしれないのに』


「どーかな」





「近々会えるかもよ?」なんて意味深なことを言ったあきらに、私は頭にはてなを浮かべていったけど、いつも飲んでるバーで働いてるんだろうし、私が飲みに行けば会える。という意味でそんなことを言ったんだろう。その日はあきらの言葉通り、私はあきらの腕に包まれるように目を閉じた。







一晩限りの男に
(初めて心を許した)




私はその日、久しぶりに彼を思い出すことなくぐっすり眠れた。








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